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2019-07-28 00:00
(連載2)輸出規制の衝撃と先鋭化する日韓対立
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
安倍内閣とすれば、二国間協議の開催、仲裁委員会の設置など、同協定に従い問題の解決を要請したのに対し、文在寅政権は徹頭徹尾、安倍内閣の要請を無視した。この間、三権分立をことさら強調し行政府は司法府である大法院の判決を尊重しなければならなく、行政府による問題への介入は不適切であるとの立場を文在寅政権は繰り返した。「元徴用工問題」に対し安倍内閣による度重なる要請に対しそのたびごとに検討中などと、お茶を濁してきた文在寅の不誠実極まりない態度に対し日本側の不信感は頂点に達していた。加えて、日本側の不信感を助長したのは非核化に真摯に取り組まないばかりか核・ミサイル開発に向けて狂奔を続ける感のある金正恩朝鮮労働党委員長に対しひたすら低姿勢ですり寄る一方、日本に対しては目の色を変えて反発する文在寅の姿勢であった。この輸出規制の発動の背景に「元徴用工問題」があることは確かであるとしても、輸出規制を安直に「元徴用工問題」とつなぎあわせるのは望ましくない。文在寅政権は日本による輸出規制を自由貿易に違反するとしてWTOに提訴するとの構えを見せている。WTOでの審理で勝訴すれば、今回の輸出規制を撤回させることができるとの狙いが文在寅にあろう。とは言え、同措置は厳格には自由貿易の問題ではない。韓国から安全保障上、懸念される諸国に多くの軍事目的転用可能な戦略物資が流出していることを念頭に、韓国に対する輸出管理における運用を再検討する問題である。
7月10日に韓国から軍事目的転用可能な戦略物資が不正に諸外国に輸出されていたことがフジテレビの報道で明らかになった。それによると、2015年から2019年3月までの4年間で不正輸出の件数は実に156件に及んだとされる。これだけの件数の不正輸出が発生していることはいかに韓国による輸出管理がずさんであることを示している。ところが、厳しい輸出管理を行っているからこそ156件もの不正輸出が判明したかのような論調が韓国側にみられる。これだけの件数の不正輸出が行われてきたことが問題なのであり、それが疑惑を生む原因となっていることを韓国側には認識していただきたい。7月10日に野上官房副長官は日本政府の姿勢を明らかにした。それによると、「・・今回の措置は、WTOで認められている安全保障のための輸出管理制度の適切な運用に必要な見直しであり、・・韓国の輸出管理については、適切な輸出管理が行われていないと懸念される事例があると承知しているが、個別の事例について答えることは差し控える」というものであった。
野上官房副長官の談話でも経済産業省が言うところの輸出管理において発生した「不適切な事案」の具体的な中身について触れられていない。このため「不適切な事案」が何なのか必ずしも明らかでない。上記の通り、韓国による輸出管理が極めてずさんであることに照らし、これまで北朝鮮に戦略物資を流出させてきたのではないかと疑われた国々が存在するが、そうした国々への流出元が韓国である可能性が高いことを示唆したものなのか、それとも韓国から北朝鮮へ直接、戦略物資が流れた個別の事案を指すのか定かではない。
他方、日韓請求権・経済協力協定の第3条3項の定めた仲裁委員会の設置に応じないまま期限の7月18日を迎えるに至った。これを受け、19日に河野外相は南官杓(ナム・グァンピョ)韓国駐日大使を外務省に呼び出し、これまでにない強い口調で、「・・韓国政府が今行っていることは、第2次世界大戦後の国際秩序を根底から覆すものに等しい。一刻も早くこの状況を是正する措置を取ることを強く求める」と抗議した。これに対し、南官杓は「元徴用工問題」は「・・民事事件であって、どのように対処されるかは当事者間の意思次第である」と反駁し、その上で日韓関連企業が原告に慰謝料として拠出金を支払うとする6月の韓国提案に戻るべきであると論じた。これに対し、「・・提案は全く受け入れられないと以前に伝えた。それを知らないふりをして極めて無礼だ」と河野は断じたのである。「元徴用工問題」を巡る解決に向けて全くめどがつかないまま、韓国の原告側が日本企業の差し押さえ資産を現金化する手続きを始めた。他方、輸出規制において「ホワイト国」からの韓国の除外に向けた手続きに日本側は入ろうとしている。この先、日韓関係がどこまで悪化するのか予断を許さない。(おわり)
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