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2007-05-17 00:00
EPA交渉戦略
鈴木 馨祐
衆議院議員
16日、私も委員を務めている衆議院外務委員会においてシンガポール(改正)、チリ、タイ(新規)との間のEPAが承認された。もっともこれらに関してはタイについては懸念されていた労働者に関する点は先送りされ、チリとの間でも資源条項が入らないなど、懸案事項は少ないものであったというのが正直な感想である。
さて、今日本の視野に入っている、もしくはすでに締結済みのEPAでもっとも懸案が大きく国内においても反対論や消極論が多いのはご存知のとおり豪州とのEPAである。特に農業分野に与える影響が大きいとされており、国内の農業関係者、自民党の農業関係議員の反対論は凄まじいものがある。交渉先送りを主張する人が非常に多い。農水省によれば、「今まさに農業の構造改革を進めているところであり、それが終わるまではオーストラリアとのEPAなど締結するわけにはいかない」ということだそうだ。ついてはこの点につき今後どう取り組んでいくべきかにつき若干私の考え方を述べたい。
もちろん懸念は理解できるし、国内の農業が壊滅的な打撃を受けるとすれば、そこには何らかの対策が必要であろう。しかし冷静に考えてみれば、このことはEPAの発効時期を先延ばしにする理屈でこそあれ、発効時期を含む条件を確定するための交渉自体を先延ばしにする理由とはならないはずである。そもそも交渉というものの鉄則は、彼我の相対的関係性において自分の立場が最も強いときに条件を確定させるということであるはずだ。今の日本とオーストラリアの状況を考えれば、(1)オーストラリアはアジアに入り込みたいと考えておりパートナーとして日本を重視している、(2)日本の経済力やアジア地域での重要性は中国の台頭に伴い徐々に低下傾向にあり当然オーストラリアにとっても今後は中国の台頭に伴い日本の重要性が低下していく可能性が高い、という環境にある。であれば、地政学的に見てもいずれ戦略的に豪州とのEPAを含む連携は避けて通れないのである以上、日本としては最も条件が有利になる状況にある時期に条件を確定する交渉を行なうべきである。
そこで考えなくてはならないのは、日本が条件を最も有利にできる状況、すなわち日本の相対的立場が最も強くなっているタイミングはいつなのかということである。先に述べた状況を考えれば、先延ばしすればするほど日本は交渉上強く出られなくなる、すなわち不利になる可能性が高い。つまりはなるべく早い時期、日本の立場が相対的に強いうちに交渉をまとめることこそが日本が最も有利な条件を得るための戦略ということである。それこそ農業のセンシティブ分野についての発効時期を遅くすることも含めてである。外交交渉は常に目先のことでなく、長期的な国益を最大化するような戦略に基づくことが必要であるし、戦略の最も重要な条件は「天のとき」、つまりは交渉の最適なタイミングの選択であるということを関係者は今一度思い出すべきであろう。
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