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2019-07-26 00:00
豪州の学者から聴いたアジア情勢
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
ある豪州の学者から述べていた内話を、ご参考までに、つぎのとおり紹介したい。
益々自己主張を強めている中国のアジアにおける台頭に対抗するためには、豪、日、米の連携が大事だ。日本は、東南アジア諸国に対し、安全保障面での各種協力をおこなってきたが、豪も行ってきた。豪の歴史は古く、1950年代から始まった東南アジア条約機構の原メンバーだし、英連邦戦略予備軍への協力も実施してきた。1971年からの5か国防衛取り決めにも、英、シンガポール、NZ、マレーシアとともにメンバーだ。こうしたスキームで軍事品の供与、訓練、教育面での支援を行ってきている。ひところ、この地域から距離を置いていた英国も、最近のEU離脱後の戦略目的で、豪へのアプローチが増えてきている。日本への接触もあると聞いている。
このほかの西欧諸国では、仏の働きかけが凄まじい。90年代までは、南太平洋における核実験などで豪仏関係は、今の日韓関係のような敵対状況にあった。しかし、2006年の豪仏防衛協定、2012年の「戦略的パートナーシップ」締結、2016年の豪の次期潜水艦入札を、有力候補の日本を押しのけ獲得した。金額は、345億ユーロだ。2018年には、マクロン大統領がはるばる訪豪、共同声明を出し、軍事面での「相互補給支援協定(MLSA)」を結んだ。今年、マクロンは、G20に合わせ訪日し、天皇陛下にお目にかかっている。日本への働きかけも相当なものだと聞く。最近よく、イタリアが西欧先進国では、中国により切り崩され「一帯一路」の諸協定を結ばされたといわれるが、実は、仏も相当水面下では中国とやり取りをしているようだ。油断ならない動きだ。仏は太平洋、インド洋地域にニューカレドニアをはじめ多くの領土を抱え、世界第2位のEEZを構成している。
友人の米学者が、1億1千万人、1500万人、100万人の数字をあげ、これはなんの数字か分かるかと聞いてきた。分からないと答えると、中国、韓国、日本におけるキリスト教信者の数だと述べた。米のトランプ大統領はじめ、ペンス副大統領、ポンぺオ国務長官など、皆敬虔なプロテスタントの原理主義的色彩の強い福音派の信者だ。日韓の問題で、日本のメディアは、韓国は右往左往している、米側に訴えても相手にされないなど、日本有利一色だが、果たして、安心してよいのかどうかだ。豪が、米の信頼を得ている一つの理由は、米にとり苦しかったベトナム戦争に参加し、6万人の兵力を派遣したからだが、韓国もそれに近い数字の兵力を出している。一緒に戦ってくれた仲間はやはり大事にする。もっとも、日本の友人によれば、今の厳しい日韓関係の状況下でも、学者同士、民間同士の交流は続いているようだ。同友人は、これが、中国とだったら、こうした交流は全部止まってしまうのだけれどもね、と笑いながら述べていた。
豪も日本も、同じ民主主義国家として、中国との経済関係は疎かにできない。それで飯を食っている人々もいるからだ。しかし、われわれの経済面での中国への寄与がまわりまわって、中国の軍事力増強に役立っていることを考えれば、経済を取るか安全保障を取るかということになり、後者を選択せざるを得ないのだろう。
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