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2019-07-24 00:00
(連載1)イラン核問題がNPT体制を揺るがす理由
倉西 雅子
政治学者
イランによる核合意の上限を越えたウラン濃縮の再開は、目下、国際社会に緊張をもたらしています。東方の朝鮮半島における北朝鮮の核問題も未だ解決を見ず、国際社会は、東西の核問題から揺さぶりをかけられているのです。そして、これら両国の核問題は、NPT体制の行方をも左右しかねないのです。
NPT体制とは、原則として国連安保理の常任理事国にのみ核保有を認め、他の諸国に対してはそれを禁じる体制として理解されています。同条約により、全世界の諸国が核保有国と非保有国に分かれるため、不平等条約との批判もあります。しかしながら、安保理常任理事国の5ヶ国には、‘世界の警察官’という重い責務があるため、核保有国と云う特別の地位が認められているのです。銃刀法が制定されている日本国では、公式に拳銃を携帯できるのは警察官のみあり、その他の国民の銃保有は違法行為となります。警察は、常に銃保持者がいないかパトロールを実施し、仮に、銃を携帯している国民を発見すれば、警察が銃保持者の身体や家宅をくまなく探し、当該拳銃を押収することとなりましょう。NPT体制とは、まさにこのような状況を想定しており、核保有国は、核の保有が特別に認められるのと引き換えに、非核保有国の核保有国に向けた試みを阻止し、仮に、核を保有する国が存在する場合には、それを取り上げなければならないのです。
国際社会において核保有国と非核保有国との間の権利と義務の関係がバランスしていれば、NPT体制は長期的に安定しますし、全ての諸国がその恩恵を受けることができます。おそらく、全世界の諸国がNPT体制の維持に積極的な賛意を表明することでしょう。しかしながら、現状を観察しますと、少なくとも3つの点において同体制には重大な欠陥があるように思えます。
第1の問題点は、‘無法者’あるいは‘強盗’が警察官を務めている点です。南シナ海問題において、中国は、常設仲裁裁判所の判決を‘紙屑’扱いして破り捨て、同海域の軍事拠点化に邁進しています。加えて、中国やロシアは、自国の核兵器を他国に対する威嚇目的で濫用しており、本来の核保有の目的から逸脱していると言わざるを得ないのです。これらの行為は警察官が法を破るに等しく、核保有国の地位のみならず、‘世界の警察官’たるべき国連安保理の常任理事国の資格をも問うべき事態でもありましょう。中国やロシアが、非核保有国に対して‘NPTを遵守せよ’と迫る時、それは、おとなしく自らに従え、あるいは、抵抗せずに侵略を受け入れよ、と要求しているように聞こえるのです。(つづく)
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