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2019-07-08 00:00
参院選挙戦に1100兆円の国債残高を論じよ
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「ついに」と言うべきか、「とうとう」と言うべきか、政府与党は消費増税という「重荷」を背負って選挙に臨むことになったという。筆者は消費増税には断固反対だが、政権与党として選挙民が喜ばない選択肢を選挙公約に入れたことについては大いに「了」としたい。財政健全化を標榜しながら、選挙に不利な消費増税を四の五の屁理屈をつけて過去2回も延期し、その「悪巧み」をもって政権の命脈を通じてきたのが安倍内閣の真骨頂だったのだから。その「2度あることは3度ある」という格言を破って、ほとんどの国民が口に苦く喜ばない政策を決断したことを、そのことにのみ限って評価したい。
この政権にとって消費増税は、プライマリーバランス黒字化という前政権との政策合意であり、いわば増税は紳士協定であった。それを2度も破ったについては、増税すべきところを国民のために仕方なく我慢するという「おためごかし」をでっち上げることで人心を収攬してきたものである。国家予算は、この間消費増税を織り込み済みで乱費したがために、すでに100兆円の大台を突破してしまった。それによる債務残高は国・地方合わせて1121兆円(2019年1月現在)と国家予算の優に10年分。その無駄使いの中にはドナルド・トランプ米大統領の言いなりとなってした先端高額兵器の爆買いを含む財政規律の放縦も主因の一つである。
増税は政権政党にとって選挙には不利である。その不利な政策をこの度選ばざるを得なくなったのは、プライマリーバランスを悪化させる数多くの人気取り政策がすでに今年度予算に山積みになっていたから、そこから逃げ出せなくなったためであって、褒めるほどのものではもとよりない。ところで、今世紀に入ってから、この国ではミドル層が崩壊していき、そのごく少数のみが大いに豊かになった反面、大衆が貧困化に陥った。つまり貧富の格差の増大である。それを裏付けるエンゲル係数は2005年を境に上昇をはじめ、安倍内閣が復活した2013年以降これが急上昇に転じている。金持ちの「太郎」の屋根に積む雪も、貧乏な「次郎」の屋根に降り積む雪も、これが如何にも平等に積もっているように見えながら、白亜の高層住宅の太郎邸と麦わら屋根で平屋の次郎邸では受ける重量感は圧倒的に違う。エンゲル係数効果と同様の重税感を消費税は与える。
上記プライマリーバランスを消費税で解消するというのであれば、増税による消費の落ち込みの発生もあって今より3倍もの20%を超える税率にしなくてはならない。8%が10%では焼け石に水だ。参院選では消費増税賛成か?反対か?ではなく、1100兆円を超えた国債残高の始末を含む国家財政規律をどう確立するか、憲法問題も含めて真面目にしっかりと議論してもらいたい。ここまで多くの国民が窮乏してくれば、もうごまかしの政治は与野党ともに通じないと知るべきだ。
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