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2019-06-06 00:00
(連載2)金正恩の海上違法取引を傍観する文在寅
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
2018年3月12日に国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁委員会の専門家パネルによる年次報告書(United Nations Security Council S/2019/171 (March 5, 2019.))が公表された。この中で北朝鮮による様々な違法取引が明らかにされたが、韓国側による石油精製品の北朝鮮への支給も疑惑視された。2018年を通じ開城工業団地の南北共同連絡事務所で使用される約338トンもの石油精製品を同理事会に届けることなく韓国が北朝鮮に支給していたとされる。追い討ちを掛けるかのように、2019年3月21日に米財務省は北朝鮮による海上違法取引についての報告書(“Updated Guidance on Addressing North Korea’s Illicit Shipping Practices.”)を公刊し、2018年2月以降の北朝鮮による瀬取りの実態を明らかにした。同報告書は北朝鮮の石油タンカーとの瀬取りを行ったか、あるいは北朝鮮産出石炭の輸出に関与したと疑われる数十隻の船舶名簿を公表した。それによると、海上違法取引に関わった船舶の総数は95隻に及んだとされる。その内、2018年2月以降、石油精製品の瀬取りには28隻の北朝鮮船舶と18隻の第三国の船舶が関与したと疑われている。
これら18隻の第三国とは不明国名を除けば、トーゴ、シエラレオネ、パナマ、シンガポール、ロシアに加えて、韓国であると記載されており、韓国船舶名は「ルニス(LUNIS)」であったと指摘された。加えて、北朝鮮産出石炭の輸出に関与した第三国の船舶は49隻であったとされる。米財務省報告書にはこれら95隻の船舶名が盛り込まれた。さらに2018年に北朝鮮が第三国から瀬取りを通じ得た石油精製品の総量は378万バレルに及ぶ可能性があると米財務省は指摘した。この総量は2017年12月22日に採択された安保理事会決議2397により定められた石油精製品の上限である50万バレルをはるかに超過している。これを受け、3月21日にムニューシン(Steven Mnuchin)米財務長官は「・・財務省は制裁を引き続き履行する。北朝鮮との違法取引を隠すため欺瞞戦術を使う海運会社は大きな危険に直面することを我々は明確にする」と力説した。こうした中で問題視されるのは韓国の海運会社による海上違法取引への関与である。既述の通り、米財務省の報告書には「ルニス」という韓国船舶の記載があったが、これ以来、「ルニス」がどのような活動を行っていたのか注目を集めることになった。しかも「ルニス」の件だけではない。
不可思議なのは文在寅政権が瀬取りの摘発に必ずしも積極的でないことである。背に腹を変えられない金正恩指導部はあらゆる手段を駆使し制裁逃れを行っている。その実態を暴くために米国、オーストラリア、カナダ、フランス、イタリア、日本、イギリスなど、国連専門機関である国際海事機関(IMO)の加盟国が瀬取りを阻止すべく常時、監視を続けているとされる。しかしこの中に韓国が加わっていないのは誠に奇異に映る。さらに奇異に映るのは瀬取りが韓国周辺の海域で行われているだけでなく疑惑の船舶が韓国の港湾に堂々と入港しているにもかかわらず、韓国政府当局がそうした船舶を一切摘発していないことであろう。韓国の港湾には5隻の船舶が抑留されているとされるが、韓国政府当局に摘発されたのはなく諸外国からの通報にしたがいそれに応じたとされる。
南北融和にのめり込むのはよいが、問題は文在寅政権がこうした海上違法行為をどれほど深刻に受け止めているかである。韓国の周辺海域で行われている海上違法取引への対応がどれほどのリスクを背負うか、同政権が十分に認識しているとは思われない。もしも文在寅政権が海上違法取引に対し毅然として対応することなく、現状を放置するような事態が続くことがあれば、これに係った海運会社や金融機関などが今後、米政府によるセカンダリー・ボイコットの対象になることがないわけではない。そうなれば、文在演の評価が失墜しかねないだけでなく韓国の孤立はさらに深まることが案じられる。そこにもってきて、金正恩が「民族の一員」として振舞うよう文在演をたきつけているのである。(おわり)
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