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2019-05-16 00:00
丸山発言が突いた北方領土問題の本質
稗田 健太郎
会社員
あえて火中の栗を拾ってみたい。日本維新の会の丸山穂高衆議院議員の「戦争」発言に多くの批判が集まっている。丸山議員が「北方領土を取り返すにはロシアと戦争をするしかない」といった趣旨の発言をしたことが俎上に上がっているわけだが、しかしながら、果たしてこうした発言を、ただ「言語道断」として切り捨てていいかどうかには一考の余地がある。というのも、「北方領土を取り返すにはロシアと戦争をするしかない」という命題には、日本の北方領土交渉がうまくいかない根本的理由が集約されているからだ。
少し言葉を補ってみればすぐにわかることである。「北方領土を取り返すにはロシアと戦争をするしかない。しかし、それはできない相談である。だから北方領土が返還される可能性は極めて低い」。こう書けば、それほどの暴論とはいえないと思うのは私だけだろうか。歴史的に見ても、武力を背景とせず平和裏に領土が返還されるようなことはまずない。小笠原諸島や沖縄県が返還されたではないかという意見もあるかもしれないが、それは米国の安全保障体制に日本が組み込まれることを交換条件としたもので、ロシアとの返還交渉にはまったく当てはまらない。中国とロシアが国境問題でもめたとき、中国が武力行使も含めた強気の対応をした際、ロシアがすぐさま交渉のテーブルについたことは、ロシアの国柄をよく示す事例といえる。
ロシアは、むき出しの「力」だけを信ずる国であり、したがって割合に単純な物理的な法則で動く国といえる。よかれあしかれ日本にはそうした「力」がない。それが、領土返還交渉が進まない根本原因であるというのは、冷静な判断というべきである。これまで日本政府は、いわゆる「拡大均衡」の大方針のもと、経済協力の深化と領土返還交渉を並行して進めてきた。これに対しロシアは、前者は歓迎するものの後者については一切譲歩しないという姿勢を崩していない。それでもなお、日本政府はあくまでロシアに対して経済協力などの平和的なカードを使って外交努力を粘り強く継続している。それは平和主義を掲げる日本の理念に則った理想的な取り組み方であり、要するにそれ以外には手がないということでもある。
北方領土問題の解決、しかも日本が望むかたちでの解決というのは、非常に困難な課題に他ならない。すなわち、なぜ解決しないのかの理由は簡単だが、その理由がわかったところで、日本が採用しうる打開策は存在しないからだ。ロシアから今までとは異なる対応を引き出すために、何らかの新しいアイディア、アプローチが求められるというのは簡単だが、実効性ある方策がはたしてあるのだろうか。丸山発言を切り捨てられない理由はまさにそこにあるといえよう。
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