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2019-05-15 00:00
(連載2)台湾に‘郭総統’が誕生するリスク
倉西 雅子
政治学者
第2のリスクは、国家運営と企業経営とは別物である点です。企業の場合、経営が傾けば、人員を整理したり、不採算部門を売却する、あるいは、コストカットを図るなど、リストラを徹底して業績の回復を図ることができます。一方、国家ともなりますと、国民や領域を対象としてリストラすることは許されません。逆に、企業のリストラによって失業者が増加すれば、これらの人々を社会保障政策や福祉政策等によって支援するのが国家の役割なのです。となりますと、郭氏が経営者感覚で台湾の国政を統べるとしますと、経費節減のために中国から安価な労働力や資材を大量に受け入れたり、M&Aの感覚で中国からの‘台湾合併案’に応じるかもしれないのです。第2のリスクは、第1のリスクに拍車をかけかねないのです。
第3のリスクは、公約の反故です。郭氏は、日本企業であるシャープを買収するに際して日本国内の雇用確保、並びに、シャープ経営の独立性の尊重を約束し、日本国内の懸念の払拭に努めています。ところが、いざ買収が成立しますと、手の裏を返したように同約束を反故にし、今ではシャープの液晶技術の結晶とも言える亀山工場を閉鎖してしまいました。
総統選挙にあっても、同氏は親中姿勢に対する警戒論に対して台湾ファースト’を強調し、有権者に対して反中的な政策方針を公約とすることでしょう。しかしながら、前例を見る限り、総統のポストに就いた途端、これらの公約は、反故にされてしまう可能性が高いのです。
米中貿易戦争の最中にあって、台湾系企業は、中国から東南アジア諸国への製造拠点の移動を急いでいるそうです。郭総統が実現すれば、脱中国の流れをも止めることができると中国は秘かに期待しているかもしれません。安全保障問題にも与えるリスクを考慮しますと、郭総統の誕生は、台湾のみならず、日本国をはじめ国際社会にとりまして、歓迎すべき未来ではないように思えるのです。(おわり)
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