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2019-04-30 00:00
(連載2)激しさを増す金正恩とトランプの鬩ぎ合い
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
金正恩とトランプの鬩ぎ合いにボルトンが加わった。4月17日にボルトンは第3回米朝首脳会談の開催をトランプが決断する前に金正恩は核兵器を放棄する準備ができていることを明示する多くの証拠を示す必要があると語った。米国が確認したいのは「北朝鮮が核兵器を放棄する戦略的決定を下したことを示す本当の兆候であると考える」とボルトンは断じた。まもなく崔善姫(チェ・ソンヒ)北朝鮮第1外務次官がこれに激しく応戦した。崔善姫は「・・何かを話す前に少なくとも第3回米朝首脳会談について両首脳間で行われた対話の内容をボルトンは理解しなければならない」とボルトンを非難し、その上で「・・もし分別や理由もなくそうした言及を続けるのであれば、あなたにとってよいことではないと私は警告する」と、これ以上にない形で凄んだのである。
この間、ボルトンに加え金正恩を酷く怒らせたのはポンペオの発言であった。ポンペオが先日、米上院の小委員会での公聴会において金正恩を「暴君」と述べたことが金正恩の逆鱗に触れたことは想像に難くない。「・・確かに、私が[金正恩は「暴君」である]と発言したことは確かです」とポンペオは公聴会で語った。これに対し、金正恩の尊厳を著しく傷つけたとしてポンペオの交代を金正恩指導部はトランプに公然と求めた。「・・米国との対話が再開された場合でも、ポンペオではなく我々との意思疎通においてより慎重でより成熟した他の人が対話の相手になることを私は希望する」と、クォン・ジョングン(Kwon Jong-gun)北朝鮮外務省米国局長が語ったことを『朝鮮中央通信』が18日に伝えた。これに対し、トランプから全幅の信頼を受けているかのように、ポンペオは直ちに反論した。「・・我々は非核化を実現する真実の機会があると確信しており、我々の外交チームが交渉を率いていく」と、そうした要求をポンペオは一蹴した。
米朝間の鬩ぎ合いが次第に激しさを増す中で、経済制裁を強化すべきであるとの意見が米議会で上がった。上院外交委員会の東アジア・太平洋小委員長のガードナー上院議員(Cory Gardner))は4月17日、「・・北朝鮮によるこうした動きは完全かつ検証可能で不可逆な北朝鮮体制の非核化が完遂するまで制裁が堅持されるべきであると共に、新たな制裁も科されるべきだということを示す」と声を上げた。4月12日の施政方針演説を契機として、金正恩陣営とトランプ陣営の鬩ぎ合いは次第に激しさを増している。奇異に映るのはトランプと金正恩の両首脳の個人的な関係は良好であると双方が公言している一方、双方の幹部達が激しい挑発と罵り合いを続けていることである。これはどういうことなのか。少なくともポンペオやボルトンの発言を踏まえると、第2回米朝首脳会談でトランプが金正恩に渡した強硬とも思われる米国案を修正する気配は今のところトランプ陣営にはないようにみえる。トランプが追加制裁を科すことを意識的に控えている感があるが、米議会では必要があれば追加制裁を科す雰囲気が醸成されているように映る。
他方、4月25日に金正恩とプーチン大統領の間で露朝首脳会談が行われたが、その成果は解釈が分かれるところであろう。金正恩がプーチンにトランプ政権への不満をぶちまけたとされるが、これを受け、プーチンが北朝鮮に対する経済制裁の緩和に向けて習近平国家主席と連携する可能性がないわけではないが、あくまで不透明である。とは言え、追加制裁を別にすれば、北朝鮮の非核化が完遂するまで現状の制裁を解除することはないとのトランプ政権の基本姿勢に変更はない。結局、こうした状況の下で懸念されるのは焦燥感を強めた金正恩が遅かれ早かれ軍事挑発の度合いをあげていくことである。今回は短射程の戦術兵器の発射実験に止まったが、今後短射程や中射程の弾道ミサイルの発射実験を強行する可能性があろう。わが国を射程に捉えた中射程のノドンやスカッドERの発射実験が強行されないわけではない。しかしそうした弾道ミサイルの発射実験が再開されることがあれば、安保理事会での経済制裁論議は確実に避けられなくなるであろう。そうした事態こそ金正恩にとって望ましくない道筋であることは間違いない。そうした中で今後、金正恩がいかなる手段に打って出てくるであろうか。それに対し、トランプはどのように応戦するであろうか、注目されるのである。(おわり)
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