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2007-05-09 00:00
日本のモノづくりは東アジア共同体と両立するか
細川 大輔
大阪経済大学教授
東アジア共同体構想に関しては、政治面、安全保障面での統合はまだしも、経済面では日本企業を中心として形成される東アジア生産ネットワークをベースとして、いわば自然発生的に統合されつつある、との発言をよく耳にする。本当にそうであろうか。
東アジア経済共同体のイメージが、東アジア諸国に進出した日本企業が、地場企業との間で縦横無尽に取引を行っているというものであるならば、答えは否である。現実の日本企業の行動は、投資対象となりうる国で、主に投資環境の整った工業団地に進出し、部材は日本からの輸入か、あるいは現地進出の日系サプライヤーからの調達が中心である。すなわち、輸出加工型企業の場合、地場のアジア企業との取引は限定的で、日本企業と地場企業とのリンケージはきわめて小さい。
日本経済研究センターが実施した研究プロジェクト「多国籍企業の東アジア戦略:日・米・欧・韓企業の比較」では、タイにおける自動車、エレクトロニクス分野に進出する日・米・欧・アジアの246企業を調査した結果、欧米勢が販売、調達面でタイの地場企業と積極的に取引しているのに対し、日本企業はタイに立地する日本国籍企業から主に調達する傾向が浮き彫りになった。使用する機械設備も日本からの輸入に依存している。こうした傾向は雇用面でも見られる。管理職に占めるタイ人比率が欧米勢では平均65%なのに対し、日本企業は同33%と低水準に留まっており、いわゆる現地化の遅れが目立っている。
日本企業にも言い分はあろう。高度の品質と顧客への安定供給を維持するためには、どうしても日本企業が生産する高品質の部品が必要であり、サプライヤーには厳しい納期要請に応えてもらわねばならない。また、日本企業が世界的に競争力を有する自動車やハイテク電子機器においては、部品間の微妙なすりあわせが必要とされ、それは日本企業同士でないと事実上困難とされる。そうしたことから、進出日本企業は将来有望な地場企業を育てるよりも、国内協力企業の進出を促すことに努力しているのが実態だ。
東アジア経済共同体の形成は、日本のアジア企業との協働や共生なしには進まない。日本国籍企業との取引にこだわる日本企業の現状は、「日本企業の、日本企業による、日本企業のための経済統合」にとどまるように見える。日本のモノづくりの追求とアジア企業との共生は両立するのであろうか。
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