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2019-04-17 00:00
(連載2)交渉継続か軍事挑発か、牽制する金正恩
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
他方、腹の虫がおさまらない金正恩は膠着状態を打ち破るかのように行動にでた。4月9日から連日、重要な会議が北朝鮮で開かれた。4月9日に朝鮮労働党政治局拡大会議が開催されたのを皮切りに、10日に政治局全員会議、11日に最高人民会議が開催された。仕切り直しを迫られた金正恩はこれらの会議で重大な問題を提起した。9日の政治局拡大会議において「・・緊張した情勢に対処して自力更生の精神で党の新しい戦略的路線を徹底的に貫徹すべきである」と金正恩が発言したことを『朝鮮中央通信』が10日に伝えた。とは言え、「新しい戦略的路線」とは何を意味するのか不透明である。そこで想起されるのは金正恩が2019年元旦に行った「新年の辞」である。金正恩曰く、「・・米国が自らの約束を守らず、我々人民の忍耐心を誤認しながら一方的に強要しようと制裁と圧力を加えるのなら、新しい道を模索しないわけにはいかないこともある。・・」すなわち、トランプに対し第2回米朝首脳会談の開催を呼び掛けると共に、それに応ぜず経済制裁に執着するならば、核・ミサイル開発に向けて邁進するぞと、金正恩はトランプを牽制したのである。「新しい戦略的路線」とはこの「新しい道」を意味したものなのか。
いずれにせよ、「新年の辞」での牽制が功を奏したかどうかは別にして、2月末にハノイで第2回米朝首脳会談が開催される運びになったが、首脳会談は金正恩にとって想定外の決裂に終わったことは周知の通りである。大恥をかかされ収まりのつかない金正恩を代弁するかのように、遠からず軍事挑発を決断する可能性があると崔善姫が3月15日に示唆した通りである。とは言え、その主眼は金正恩から見て限りなく強硬な姿勢を堅持するトランプ側への牽制にあり、非核化交渉から離脱することを金正恩が決めたわけではない。続いて、金正恩は4月10日に対北朝鮮経済制裁に改めて猛反発する姿勢をみせた。「・・自力更生の旗を高く掲げ、社会主義建設をさらに前進させ、制裁で朝鮮民主主義人民共和国を屈服させることができると誤解している敵対勢力に深刻な打撃を与える」と、金正恩は凄んだのである。
この直後の4月11日に開催されたのが米韓首脳会談であった。トランプと文在寅が直接会談した時間があまりに短かったために文在演がトランプに軽くあしらわれたかのような報道が行われた。両者とも表向きは笑顔を絶やさなかったが、非核化交渉の再開で一致したものの、関連する他の争点でことごとく対立した印象を残したのは紛れもない事実である。文在演は持論の「グッド・イナフ・ディール」をトランプに提案したという。それによれば、米朝が非核化合意に達した上で、北朝鮮が寧辺核施設とそれ以外の一部の核施設を廃棄するのと並行して、米国は経済制裁を段階的に解除するというものである。これに対し、トランプは北朝鮮が完全な核の廃棄に応じて初めて制裁を解除するとした「ビッグ・ディール」をあくまで目指すことを明らかにした。文在演の提案をトランプは黙殺したのである。また文在演は米朝首脳会談の早期の再開をトランプに求めると、トランプは性急に急ぐ必要はないと跳ねのけた。さらに両者は南北経済協力の再開でも反目したとされる。文在演が執拗に求める金剛山観光や開城工業団地の再開について、「今はその時期ではないと思う」とトランプは一蹴した。
第2回米朝首脳会談以降、米朝関係がまたしても緊張をはらむなかで、金正恩に擦り寄りを続ける文在演を快く思わないトランプにとって、文在演は「招かれざる客」であったようである。今回の米韓首脳会談は米韓関係さえも揺れ動いていることを物語った。他方、南北関係が今後、どのように進展するかも不透明なところである。こうしたなかで、4月12日の北朝鮮最高人民会議における施政演説で金正恩は第3回米朝首脳会談の開催に向けて改めて重大な問題提起を行った。「・・第3回首脳会談がハノイ会談のように再現されるなら、行う意欲もない」と金正恩は前置きし、「・・朝米が互いに受け入れ可能な内容が合意文に記されれば署名するが、それは米国がどんな姿勢で臨むかにかかっている」と力説し、その上で「・・今年末までは米国の勇断を待つ」と断じた。このことから明らかな通り、金正恩は年内と期限を切り非核化交渉の継続か、それとも大規模軍事衝突をも辞さない覚悟で軍事挑発に打って出ると、トランプに凄んだのである。(おわり)
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