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2019-04-16 00:00
(連載1)交渉継続か軍事挑発か、牽制する金正恩
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
2019年2月末の第2回米朝首脳会談の決裂から約2週間後の3月15日に、崔善姫(チェ・ソンヒ)北朝鮮外務次官は平壌で記者会見を行い、決裂の事由について、「・・マイク・ポンペオ米国務長官とジョン・ボルトン大統領補佐官が敵対感と不信を醸成した」と両者を名指しで指弾し、「・・北朝鮮はどんな形であれ米国の要求に譲歩するつもりはない」と断じ、その上で遠からず金正恩・朝鮮労働党委員長が大規模な軍事挑発を行うかどうかを決断する可能性があるとほのめかした。しかし、第2回米朝首脳会談で具体的にどのような話し合いがトランプ大統領と金正恩の間で行われたかは明らかでなかったことから、崔善姫が言うところの「北朝鮮はどんな形であれ米国の要求に譲歩するつもりはない」との意味が必ずしも明らかでなかった。首脳会談直後の記者会見で、金正恩が寧辺核施設の廃棄と引き換えに「経済制裁の全面解除」をトランプに要求したのに対し、トランプは寧辺核施設の廃棄に加え寧辺以外のウラン濃縮施設の廃棄の要求を金正恩に突き返したため、折り合いがつかなかったとトランプ自身から説明があった。
その後、トランプは首脳会談を振り返り金正恩が取引する準備ができていなかったと、4月2日に発言した。トランプは「金正恩委員長に『あなたは取引のための準備ができていない』と言って席を離れた」と語った。トランプの言うところの取引の中身とは何であったのか。どうやら上記の2月28日の記者会見でトランプが行った説明ほど、ことは単純でなかったことが後日判明した。首脳会談でトランプが金正恩に強硬とも思われる米国案を突き付けていたが、その概要が明らかになった。2019年4月6日付けの『読売新聞』は「米朝首脳会談 5項目合意案」の見出しで米国案の概要を伝えた。米国案は1.非核化条項、2.朝鮮戦争の終戦宣言、3.連絡事務所の設立、4.北朝鮮への経済支援、5.米兵の遺骨の発掘作業の開始からなるものであったとされる。米国案によると、北朝鮮側が1.非核化条項を受け入れれば、米国は2.3.4.を付与する用意があるとされる。
しかも特筆すべきは1.非核化条項の内容であった。非核化条項は、a.非核化の定義、b.凍結措置、c.申告ならびに検証措置の三点から構成された。a.非核化の定義によると、北朝鮮はすべての核関連施設の完全な解体を行うと共に、核兵器と核物質を米国に運び出す。b.凍結措置とは、北朝鮮はすべての核関連活動と新たな施設の建設を凍結する。c.申告ならびに検証措置とは、北朝鮮はすべての核開発計画を申告すると共に、米国と国際査察団による査察を受け入れる。
しかも米国案では北朝鮮による非核化措置の履行と米国による見返りの履行が工程表の形で示されていた。すなわち、北朝鮮が寧辺核施設の完全な廃棄を実施するのにしたがい、米国は終戦宣言と連絡事務所の開設を行い、最終的に非核化措置の履行が完遂すれば、経済制裁を解除するというものであった。こうした内容を盛り込んだ米国案をトランプは何気なく金正恩に示すと、これを読んだ金正恩の表情は一転してこわばったという。金正恩が猛烈に反駁したことは想像に難くない。この米国案を策定したのはボルトンであったとされる。そのボルトンが首脳会談直後の3月3日に「・・米大統領の責任は米国の国益を確保することであると考える。私はトランプ大統領が・・その責任を果たした」と発言したのは、以上の経緯を踏まえてのことであった。(つづく)
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