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2007-05-09 00:00
通商問題を政治決着できる体制も不可欠
村上正泰
日本国際フォーラム研究主幹
さる5月4日、ブルネイで開催された我が国とASEANの経済閣僚会議において、FTA(自由貿易協定)を柱とするEPA(経済連携協定)の締結で大筋合意に達した。8月までに最終合意を図り、11月に予定されている日ASEAN首脳会議での署名ならびに来年の発効を目指すという。出遅れ感が指摘されている我が国のFTA交渉においてひとつの大きな前進であることには間違いないが、コメなどは自由化対象から除外される方向とのことであり、日本のFTA推進において農業問題など課題が山積している状況に変わりはない。さらにいえば、これがオーストラリアとのFTA交渉となると、農業問題の重要性はこの比ではない。
ここでは農業問題に深入りする余裕はないが、日本がそうした対応を続けている一方で、世界ではFTAをめぐって大きな動きが生じている。4月に米韓FTA交渉が合意に達したが、これは安全保障問題と経済問題とが結びつけられたFTAであるともいえよう。韓国はFTAにおいて開城工業団地の原産地認定を目指しており、北朝鮮問題に関連した政治的思惑も見え隠れする。また、韓国が米国だけではなくEUともFTA交渉を開始し、米国がAPEC単位でのFTAを主張するなど、東アジアだけではなく域外国とのFTAにも大きな関心が集まっている。東アジアにおけるFTAをめぐってこうした変化が起きている中にあって重要なことは、ただ単にFTAを締結するかどうかだけではなく、それを超えていかなる政治的メッセージを提起していけるかということになろう。
そうした観点から我が国のFTAへの対応をみると、農業に代表される政治問題を前にして役所の縦割り的発想から脱することができず、戦略的な発想ができていないことが目につく。これはかねてから指摘されてきたことであり、その度に官邸のリーダーシップの必要性などが幾度となく指摘されてきたが、いまだその弊害に変わりはない。我が国がアジアにおいて存在感を高めていくためには、欧米でそうであるように、通商問題を政治決着できるような体制も不可欠であろう。
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