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2019-03-25 00:00
(連載1)私物化を偽装したゴーンの骨折り損
中村 仁
元全国紙記者
保釈に至るゴーン被告の様々な行動を見ていますと、結局、ゴーン被告は「骨折り損のくたびれ儲け」に終わりそうに思います。「儲け」はあるのか。この諺の意味は「くたびれしか得られなかった」、つまり「くたびれただけ」ですから、「儲け」はないことになります。拘置所から保釈される際、ゴーン被告は作業衣姿に変装しました。撮影した映像を巻き戻した姿ははっきりゴーン被告と分かります。
子供じみた変装の狙いは何か。「取材陣を巻くため」はウソで、保釈直後の話題を一時的にでも変装問題に誘導することだったのでしょう。特にテレビは本筋とは無縁の話題に延々と時間を割き、まんまと乗せられました。変装では多少の「儲け」はあったかもしれません。では起訴の対象となった「報酬の虚偽記載」、「会社資産の私的流用、私物化」では、それが違法であろうとなかろうとにかかわらず、ゴーンが失うものは膨大、巨額です。ある時点までは名経営者と持ち上げられた人物が「骨折り損」に手を染めたのか。正式の手続きを踏んでいれば、こんなことにならなかったはずです。
ゴーンが失った最大のものは、ルノー、日産の会長職でしょう。かりに無罪判決を勝ち取ったとしても、復職はありません。ゴーンが納税上の居住地をオランダに置き、フランス居住者を対象とした富裕税を逃れようとしていました。仏政府が大株主、かつてはルノー公団だった巨大企業のトップがしてはならない行為、経営倫理の欠如が解任の最大の根拠になったようです。
日産、三菱自動車の会長職も同様で、復帰はありません。フランス政府、ルノーが認めるはずはありません。裁判に数年から10年はかかるでしょうから、自分の身を守るだけで精一杯です。3社の会長報酬の合計30億円(年間)を失ったのです。日産会長の報酬の過少記載(90億円)はどうでしょうか。ゴーン側は「報酬は未払い。退任後の報酬のつもり」、「社内の秘密の場所から見つかったという複数の文書は覚え書きにすぎない」と言っているとか。(つづく)
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