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2019-03-20 00:00
(連載2)第2回米朝首脳会談決裂から米朝対立局面へ
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
ポンペオやボルトンは金正恩の「完全な非核化」の履行意思については最初から疑ってかかっていた。2018年6月以降、北朝鮮領内で行われているあらゆる核関連活動の全容を盛り込んだ申告の提出に一向に応じようとしない金正恩の頑なな姿勢をみれば、「完全な非核化」に向けた履行意思は明らかに疑わしいものがあった。これに対し、トランプは多少ならずとも金正恩が「完全な非核化」に向けて真剣に取り組むと期待していたのではないか。金正恩による親書を受け取る度に、どこかしらトランプは金正恩に胸襟を開いたところがあったのであろう。ところが、米朝首脳会談で寧辺核施設以外の非核化措置に応じないだけでなく「経済制裁の全面解除」ばかりを訴える金正恩の傲慢な態度をみて、「完全な非核化」の意思と意図など金正恩にはないとわかったのであろう。トランプが金正恩の真意を理解したとすれば、それが今回の首脳会談の成果であったかもしれない。
いずれにしても、第2回米朝首脳会談が事実上、決裂し手ぶらで平壌への帰途に着くことなど、金正恩は全く想定していなかったであろう。数十時間もかけ平壌からハノイまで列車で移動し、予想だにしない散々な結果に終わったことに金正恩の腹の中は怒りで煮えくり返っているであろう。首脳会談の決裂に時期を合わせるかのように、2018年に解体したはずの東倉里(トンチャンリ)のミサイル実験場にある一部の施設の復旧が行われていることが3月5日に確認された。米研究機関の「38ノース」は同日、ミサイル発射台やエンジン燃焼実験台などの復旧が行われている様子を捉えた衛星写真を公表した。これに対し多少ならずとも衝撃を受けたトランプは今後、復旧がさらに進むことがあれば、「金委員長に非常に、非常に失望するだろう」と6日、ホワイトハウスで記者団に対し語った。
これを契機として、トランプ政権は経済制裁の強化へと舵を切ろうとしている。ボルトンは5日、フォックス・ニュースのインタビューで、金正恩が今後非核化に真剣に取り組まないようでは一層の経済制裁を科す可能性があることを示唆した。ボルトン曰く、「・・北朝鮮が非核化に前向きでない場合、これまで科されてきた制裁は緩和されず、米国はさらに制裁を強化することも検討する。」ボルトンのいうところの経済制裁が具体的に何を指すか明らかでないが、経済制裁に曝され苦しむ感のある金正恩体制への制裁の強化は重大な意味を持つ。またポンペオは12日、「国連の制裁を履行することは極めて重要である。米国はすべての国がこれを最大限厳格に履行することを求めている」と力説した。こうしたトランプ政権の動きと並行するかのように、米上院の議員達も経済制裁の強化の必要性を訴えだした。第2回首脳会談の直前の2月11日に、南北交流事業の再開を通じた経済制裁の緩和に否定的なクルーズ(Rafael Cruz)上院議員(共和党)とメネンデス(Robert Menendez)上院議員(民主党)がポンペオに制裁の緩和に応じないよう連名で書簡を送付したが、それに加えホーレン(Chris Van Hollen)上院議員(民主党)やルビオ(Marco Rubio)上院議員(共和党)などは北朝鮮に対する経済制裁網に事実上の抜け穴や抜け道が多々ある現状を踏まえ、そうした抜け穴や抜け道を塞ぐべく各種の金融制裁措置を講じなければならないと訴えている。こうした動きは米議会でも大きな流れになる可能性がある。
トランプ政権が経済制裁の強化の方向に舵を切ろうとしている中で、金正恩側も猛反発に転じた。崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は15日、再び大規模な軍事挑発の再開に戻るかいなかを金正恩がまもなく決断すると牽制したのである。その軍事挑発にはICBM発射実験や核実験の再開が含まれる可能性がある。第2回米朝首脳会談で金正恩がトランプに対しそうした軍事挑発は行わないと何度も約束したとは言え、事態は急転直下、不透明となってきた。しかも怒りの収まらない崔善姫は米朝首脳会談の決裂の矛先をポンペオとボルトンに向け、「我々はいかなる形でも米国の要求を受け入れる意図はないし、そのような交渉をするつもりもない」と断じたのである。軍事挑発の再開の可能性を示唆したと受け取れる崔善姫の発言はトランプ政権が今後、米朝協議に軟化姿勢を示すかどうかを金正恩が見極めようとしていることを物語るものである。それいかんでは、金正恩が軍事挑発の再開を宣言する可能性がある。米朝関係はいよいよ対立局面に転じる可能性が出てきた。(おわり)
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