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2019-03-05 00:00
(連載1)決裂に終わった第2回米朝首脳会談
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
2018年6月にシンガポールで開催された第1回米朝首脳会談は徹頭徹尾、掛け声倒れの政治ショーというべきで興覚めと失望を誘うものであった。こうしたことから、ベトナムのハノイで2月27日、28日に開催された第2回米朝首脳会談でも両首脳が相手を称えあうという、またしても下手な政治ショーを見せられるのかという一抹の不安があった。しかし第2回首脳会談は誰も想定しえなかった結末となった。報道機関が二日目の昼食会場を映し出す中、会場に両首脳及び側近たちは最後まで現れなかった。その後、米国側から予定変更の報道があり、共同声明署名式と昼食会は中止されたことが明らかになった。共同声明が採択されなかったことは同会談の事実上、決裂したことを強く印象付けるものであった。この結果、トランプ大統領による記者会見が前倒しされた。ポンペオ国務長官を連れ立ってトランプが行った会見は驚きを持って迎えられた。トランプは金正恩・朝鮮労働党委員長が「経済制裁の全面解除」を強硬に要求したことが破談を導いた主たる事由であったと力説したのである。記者会見を終えたトランプは即座に大統領専用機に乗り込みハノイを後にした。トランプによる記者会見を通じ首脳会談破談の責任を向けられた北朝鮮側も急遽、釈明の記者会見を行った。李容浩(リ・ヨンホ)外相は3月1日未明に会見を行い、首脳会談が頓挫した責任はむしろトランプ側にあることをほのめかした。ところが、数日後、米朝間の対立はそもそも会談初日の27日の夕食会でトランプが金正恩に非核化について定義の文書を手渡ししたやり取りから始まっていたことが明らかになりだした。本稿は米国側の記者会見と北朝鮮側の記者会見の骨子を概観することにより、第2回首脳会談ではどのような争点で双方が衝突したのか浮き彫りにしたいと考える。
首脳会談が劇的な幕切れを迎える中で、急遽トランプの記者会見が始まった。会見にはポンペオも加わった。記者から首脳会談破談の原因を問いかけられると、トランプは「北朝鮮は制裁の全面解除を求めたが、応じられなかった。北朝鮮は我々が求めた広範な分野で非核化に前向きだった。だが、それで全ての制裁を解除することはできなかった」と即答した。この発言は金正恩側が寧辺核施設の廃棄と「制裁の全面解除」を取引しようとしたが、これでは不釣り合いの取引であるとしてトランプが応じなかったことを明らかにした。記者に寧辺核施設の廃棄を求めたかと聞かれると、「・・寧辺の施設は非常に大きいが、非核化には、それだけでは十分でない」とトランプは答えた。トランプは寧辺プラスアルファとして寧辺以外のウラン濃縮施設の廃棄を要求したことを明らかにした。トランプ曰く、「・・我々は多数のことを取り上げた。彼らは我々がそんなことまで知っているのかと驚いたと思う。・・」、トランプに続いてポンペオが「・・ミサイルと弾頭、武器システムはまだ残る。我々が合意に達することができなかった多くの要素がほかにある」と述べた。これに対し記者が核関連施設の申告かと問うと、ポンペオは「それに完全な核申告、我々が今日到達できなかったことすべてだ」と回答した。これによりトランプ政権が2018年6月の第1回米朝首脳会談直後から求めてきた核申告の提出を金正恩は改めて拒絶したことが明らかになった。
記者から北朝鮮による核実験や弾道ミサイル発射実験の再開の可能性を問われると、「彼は実験は始めないと言った。彼はロケットやミサイル、核にかかわるあらゆるものの実験はしないと言った・・」とトランプは答えた。実験再開があるとすれば、これまで積み上げてきた米朝協議の努力が一気に吹き飛ぶだけでなく、またしても米朝間での大規模な軍事対立の危険性を導く危険性がある。したがって、トランプとすれば細心の注意を払いそうした可能性を回避する必要がある。そこで重大性を持つのが以下の米韓合同軍事演習の中止である。記者から米韓合同軍事演習の再開の可能性を聞かれると、トランプは「軍事演習はしばらく前にやめた。やる度に1億ドルの費用がかかるからだ。・・」、トランプは莫大な経費を要する観点から同軍事演習の中止を強調したが、同演習ほど、金正恩を激しく刺激するものはないことを踏まえると、上記にあるとおり、核実験やミサイル発射実験の強行を食い止めるためにも同演習を再開しないと明らかにしたのである。
さらに記者が北朝鮮に対して今後制裁を強化する可能性はあるかと問われると、トランプは「・・我々はすでに大変強力な制裁を科しているということだ・・」と返答した。以下に概観する通り、現在科されている経済制裁が北朝鮮経済を日々、締め上げていることを踏まえ、今後、金正恩指導部が核実験やミサイル発射実験を強行しない限り、追加制裁は科さないと金正恩を宥めていることがこのことから伝わって来る。トランプの記者会見の後、李容浩外相は3月1日未明に記者会見を急遽開催した。首脳会談が破談に終わったのは金正恩がトランプの言うところの「制裁の全面解除」を求めた結果であったことに対する反論であった。李容浩は会見を通じ首脳会談が決裂に終わったのはトランプ側に責任があったと印象付けようとしたのである。(つづく)
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