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2019-02-24 00:00
(連載1)ぶっつけ本番で迎える第2回米朝首脳会談
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
2月27、28日の第22回米朝首脳会談の開催が決まって以降、首脳会談に向けて米朝実務者協議が行われているものの、双方の主張の間には依然として大きな溝が存在するとされる。実際に2018年9月に金正恩・朝鮮労働党委員長と文在演大統領の間で発出された「平壌共同宣言」に盛り込まれた文言が実務者協議での議論の基礎となっていると推察される。同宣言は、米国が「相応の措置」をとるならば、北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)核施設の廃棄を行う用意があるとした。その後、10月7日に金正恩はポンペオ国務長官に対し米国がとるべく「相応の措置」の具体とは朝鮮戦争の終戦宣言だけでなく経済制裁の解除であると明言した。加えて、トランプ大統領が引き続いて求めているすべての核関連活動の全容を盛り込んだ申告の提出を拒絶した。これに対し、ポンペオは終戦宣言には寧辺核施設の廃棄だけでなくすべての大量破壊兵器の廃棄、核弾頭、ICBM、移動式発射台の廃棄や国外搬出を行うことが必要であると言い返したという経緯がある。
その後、米朝高官協議も実務者協議も開催されないまま、この1月18日にホワイトハウスから2月下旬の第2回首脳会談の開催が急遽、発表された。こうした背景を踏まえた時、首脳会談で果たして北朝鮮の「完全な非核化」に向けて前進はあるのか少なからず疑問にならざるをえない。1月31日にビーガン(Stephen Biegun)北朝鮮担当特別代表は首脳会談に臨むトランプ政権の基本姿勢を明らかにした。ビーガンは改めて核関連活動の全容を盛り込んだ申告の提出と検証の実施を北朝鮮に要求する一方、その見返りについて議論する余地があることを示唆した。ビーガンは申告の提出を要求すると発言したが、金正恩が申告の提出を激しく拒否している中で、トランプは申告の提出に拘るかであろうか。また北朝鮮の廃棄対象は豊渓里(プンゲリ)の核実験場、東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場に加えて、寧辺核施設であるとみられるが、それだけで十分なのか。米国の情報機関が問題視する他の多くの核・ミサイル関連施設の扱いはどうなるのか。他方、「相応の措置」という米国の見返りの中身が何なのかは依然として不透明である。トランプ政権が見返りの中身を決めかねているのか、それとも金正恩側と今も綱引きをしているのか不確実である。多少ならずとも何らかの見返りを与えないかぎり、非核化の履行に向けた金正恩の動機が低下することは事実であろう。
それではトランプが朝鮮戦争の終戦宣言に応じる用意はあるのか。加えて、何らかの経済制裁の緩和や解除に向けてトランプが動くことがあるのか。終戦宣言は解釈によるであろうが、それだけで朝鮮戦争の休戦協定に替わる平和協定の締結や在韓米軍の縮小や撤退につながるものではなく、象徴的な措置と言えるであろう。その限りにおいてトランプも見返り対象に含めている可能性がある。とは言え、終戦宣言が引き起こしかねない一連の波及効果を斟酌すれば、トランプも安易には動けないであろう。他方、経済制裁の緩和や解除が非核化の動向を決めかねない決定的な問題であることは疑う余地はない。非核化に向けて不十分なまま制裁を緩和したり、解除するようなことがあれば、金正恩が非核化を真剣に履行しようとは思わなくなるであろう。特に制裁の緩和や解除対象として昨年から浮上しているのが南北協力共同事業として以前に進められたが、現在停止されている開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光事業の再開である。1月31日にビーガンが制裁の緩和の可能性をほのめかしたことから急遽、この問題が重大視され出した。
しかも昨年末から文在演が機会ある事に南北協力共同事業の再開をほのめかしていることは、性急な外交成果をあげたいトランプがそうした方向に動くのではないかとの憶測を呼んでいる。こうした中で懸念されているのが一部の南北協力共同事業の再開でトランプが金正恩と取引する可能性である。こうした中で2月6から8日まで平壌で開催されたのが米朝実務者協議であった。席上、ビーガンは金赫哲(キム・ヒョクチョル)北朝鮮米国担当特別代表から「相応の措置」として南北協力共同事業の再開を強硬に要求されたとされる。その後、ビーガンはソウルで文在演政権関係者から何らかの南北協力共同事業の再開がない限り北朝鮮の非核化は全く見込めないと理解を求められたという。これを受ける形で、トランプ政権は金剛山観光の再開について急遽、検討を始めたとされる。第2回米朝首脳会談の開催が迫る中でこうしたやり取りは重大性を持っている。(つづく)
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