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2019-02-21 00:00
護衛艦いずもの空母化は「専守防衛」に反しない
加藤 成一
元弁護士
政府は2018年12月18日に閣議決定した新しい防衛計画の大綱(防衛大綱)と中期防衛力整備計画(中期防)で、海上自衛隊が保有するへリコプター搭載型護衛艦いずもを改修し、短距離離陸・垂直着陸型の米国製最新鋭ステレス戦闘機F-35Bの発着を可能とする事実上の空母化を盛り込んだ。これに対しては、立憲民主党や日本共産党などの一部野党から、これは憲法9条2項で保持を禁じる「戦力」に該当する可能性があり、「専守防衛」に反するとの批判が出ている。
憲法9条2項の「戦力」とは、判例では「侵略的戦争遂行能力を有する人的、物的組織体を意味する。」(水戸地裁昭和52・2・17判時842・22=百里基地訴訟)とされ、政府見解では、「自衛のための必要最小限度を超えるもの」を戦力と解している(2014年版防衛白書)。また、「専守防衛」とは、「相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限度にとどめ、保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限られる。」(1989年版防衛白書)とされる。確かに従来の政府見解では、「攻撃型空母」等の保有は憲法9条2項の戦力に該当し、専守防衛の範囲を逸脱するとされてきた。しかし、ここでいう「攻撃型空母」とは、まさに文字通り、もっぱら相手国の領土・領海・領空を攻撃侵略する能力と目的を有する「空母」を意味すると解すべきであり、もっぱら自国の領土・領海・領空を防衛する目的のみに限定された「空母」は「攻撃型空母」には該当せず、「専守防衛」にも反しないと解すべきである。なぜなら「専守防衛」とは相手国を攻撃侵略せず、もっぱら自国を防衛するための防衛戦略だからである。
言う迄もなく、護衛艦いずもの空母化は、相手国の領土・領海・領空を攻撃侵略することを目的とするものではなく、尖閣諸島など日本の南西島嶼防衛が重要な目的である。自衛隊那覇基地から尖閣諸島までは425㎞も離れている。現在尖閣諸島の防空任務に就いているF-15戦闘機では那覇基地から尖閣諸島まで数10分を要する。将来導入が予定されるF―35Bでも往復1時間近くを要するとすれば、消費燃料を含め実際の有事への対処能力も極めて限られる。しかし、有事の際に尖閣諸島周辺に、F―35Bを搭載し空母化した護衛艦いずもが展開していれば、極めて短時間に能力的余裕をもって有事への対処が可能となるのみならず、抑止力としても極めて重要である。以上のように考えると、護衛艦いずもの空母化は、前記判例のいう「侵略的戦争遂行能力を有する人的物的組織体」としての戦力には該当せず、専守防衛に反しないことは明らかである。また、前記政府見解のいう「必要最小限度を超える」戦力にも該当しないことは明らかである。
近年における中国による国際法を無視した南シナ海における人口島建設と軍事基地化、さらに、中国が「自国領土」と主張する東シナ海尖閣諸島への常態化した領海侵犯、協定を無視した一方的な東シナ海ガス田開発、そして、西太平洋第二列島線への海洋進出などは到底看過できない事態である。このような安全保障環境の激変に対しては、護衛艦いずもの空母化とF―35Bの導入を含め、日本の防衛体制の整備充実は必要不可欠であり、日本にとっては、護衛艦いずもの空母化について与野党で「違憲論争」をしている時間的余裕など全くないのである。
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