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2019-02-13 00:00
(連載2)ぎくしゃくする日韓関係の背後に潜むもの
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
1月10日の文在演の年頭記者会見において暴走ぶりはさらに鮮明になった。同会見において日本の政治家らが歴史問題を「政治争点化し拡散させていくことは賢明な態度でない」としたうえで、「日本政府は過去に関し、もう少し謙虚な立場を示すべきだ」と文在演は断じた。韓国大統領が日本に対しここまで激しく批判するのは極めて異例のことである。レーダー照射問題に関連して日韓両国が事実関係を争っている間、国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会の専門家パネル報告書に盛り込まれた内容が各報道機関から伝えられた。その中で文在演政権が北朝鮮に対する独自経済制裁を遵守していないことが明るみになった。
金大中政権時代から南北共同事業として進められていた開城工業団地事業は南北交易額において圧倒的な比率を占めてきた。しかし2016年2月に朴槿恵政権は金正恩指導部が強行した第4回核実験などの大規模軍事挑発に対する独自経済制裁として開城工業団地を閉鎖したという経緯がある。ところが今回、文在演政権が国連安保理事会へ無届けで大量の石油精製品を北朝鮮側に提供していたことが明らかになった。これによると、2018年1月から11月までの間に約338トンに及ぶ大量の石油精製品を北朝鮮へ文在演政権は支給していた。北朝鮮制裁委員会の専門家パネルから説明を求められた文在演政権は事実関係を認めたものの、その説明は誠に歯切れが悪い。
しかも文在演政権は北朝鮮をもはや「敵」とみなさない姿勢に大きく舵を切った。韓国国防部公刊の『国防白書』はこれまで事ある度に北朝鮮を「敵」として位置付けてきたが、2019年1月15日公刊の2018年版の『2018国防白書』から「北朝鮮軍はわれわれの敵」という文言が8年ぶりに姿を消した。また日本と「自由民主主義と市場経済の基本価値を共有」するという文言も消えた。こうした文在演政権の方向転換は確信的と思われる。南北関係改善を最優先する文在演が打って出ている一連の行動は金正恩に阿るばかりか、日本との関係悪化を意識的に金正恩に見せつけることで金正恩に対し自らの決意を表明しているようにもみてとれる。それでは今後、文在演政権はどこへ向かおうとしているのか。
2017年5月に発足した文在演政権の任期中は北朝鮮への従属的な姿勢と日本への反発的な姿勢は続くと考えられる。文在演政権、とりわけ文在演の政治姿勢は明らかに常軌を逸している感があるとは言え、文在演と韓国民と同一視することは必ずしも好ましくないであろう。文在演政権は一連の出来事や事件を意識的に煽ることで相当数の韓国民の日本への反発感情を刺激させていることは事実であろう。しかし日韓関係の悪化を煽る感のある文在演の姿勢は明らかに行き過ぎであると捉え、事態を冷静に捉えている韓国民も多くいるはずである。2月27、28日に第2回米朝首脳会談がベトナムで開催されるとトランプから発表された。その翌日の3月1日には日本による植民地統治に反発する大規模な反対運動である「三・一独立運動」百周年記念日を迎える。昨年10月から悪化の一途を辿っている感のある日韓の対立が3月1日の「三・一独立運動」百周年に向けた序曲であるとは思いたくない。(おわり)
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