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2019-02-09 00:00
(連載2)大国中国の成熟と安定
加藤 隆則
汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
もう一つ忘れてはならないことがある。日本のメディアでは、反腐敗の政治闘争で実権を掌握した習近平総書記を独裁者として伝える報道が圧倒的だろう。だが、習近平政権下で、それまでさんざんメディアをにぎわせたいわゆる“反日”デモがパタリと途絶えたことはほとんど注目されていない。国内をしっかり掌握した指導者の登壇は、中国でビジネスをする日系を含めた外資系企業にとっても、非常に歓迎すべきことなのだが、そろばん勘定をはじく人々はそんな恩恵に対して沈黙を守っている。
過去の大規模な“反日”デモは、日本の国連安保理入りに反対した2005年、漁船船長の逮捕に端を発した2010年、尖閣諸島の国有化に抗議した2012年と、政権基盤の弱い胡錦濤時代に集中している。歴史的にみれば、抗日運動は1919年5月4、山東省の権益を求めた日本の対華二十一か条要求に抗議した五・四運動が始まりだが、当時も軟弱な中国政府を非難する側面が強かった。特に日系のスーパーや工場が甚大な被害を受けた2012年のデモでは、共産党中央の規律調査を受けた元治安トップの周永康元党中央政法委書記(元党中央政治局常務委員)が、抵抗を示すため背後で糸を引いたとの見方が強い。デモの先頭に「便衣」(私服警官)がいたとの指摘もある。
周永康は習近平を暗殺し、政権を転覆させるクーデターまで企図していた。習近平はその後、周永康一派を反腐敗キャンペーンで根こそぎ摘発し、治安部門の実権を手中に収めた。最高指導部である常務委の定数を9から7に減らしたうえ、常務委に席のあった政法委書記を政治局員に格下げし、総書記自らが政法委を統括する体制を整えた。周永康の後ろ盾として、胡錦濤時代も院政を強いた江沢民元総書記の影響力は一掃された。
“反日”デモを含め、民族感情を刺激する排外運動は動員力が強く、政権の抵抗勢力による反政府運動や政治闘争を誘発しがちだ。多数の高位高官を摘発し、習近平は恨みも相当買った。隙あらば足元を救おうとしてる勢力は数多く存在するだろう。政権基盤が弱ければ綱渡りの内外政策を強いられる。裏を返せば、毛沢東時代がそうであったように、強力な指導者のもとで、不規則な「現代版義和団事件」は起きない、というのが中国の政治力学だ。指導者が毅然とした態度を取っている以上、メンツを立てて口出ししないのが中国人の発想である。だからこその「祖流我放」=「“祖”国も“流”氓(ヤクザ者)だから、“我”(私)は“放”心(安心)だ」なのである。(おわり)
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