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2019-01-31 00:00
(連載1)近年の中国の学生の変化
加藤 隆則
汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
2010年、日本の海上保安庁が尖閣諸島付近で中国漁船の船長を逮捕した事件では、「祖流我放」、つまり「“祖”国も“流”氓(ヤクザ者)だから、“我”(私)は“放”心(安心)だ」との四字熟語は生まれなかった。中国側がゼネコン・フジタの社員4人を「軍事管理区域の違法撮影」で拘束した報復措置についても、官民ともに、奥歯に物が挟まったような言い方が印象的だった。
日中間では過去に、首相の靖国神社参拝や尖閣諸島の領有権問題で大規模なデモが起きた。物見遊山の群衆が、戦時中を彷彿させる「抵制日貨(日本製品ボイコット)」のスローガンを叫びながら、デモ参加の当事者たちがキャノンやニコンを手に記念写真を撮っている姿が揶揄された。日本車が襲撃されたが、大けがを負ったのは運転手の中国人で、破壊された日系スーパーの従業員も顧客もしょせんは中国人だ。
怒りと不満をぶちまけたものの、どこか釈然としない、消化しきれないものが彼らの心の中に沈殿していた。事態が収束した後、決まって理性的な愛国を訴える声が後から追いかけたが、過剰な熱情の前では焼け石に水だった。言い訳のようにしか聞こえない知識人の発言もあった。参加者は社会に不満を持つ出稼ぎ労働者で、都市住民はそんな愚かなことはしない、という人々もいたが、外から見れば同じ中国人に違いなかった。ところが今回は違う。iPhoneをファーウェイの携帯に買い替えるようと呼びかける動きが起きたものの、iPhoneを使っている若者が嫌がらせを受けたという話は聞かれない。私の周辺でも学生が平気でiPhoneを使っているし、すでにファーウェイの携帯を使っている学生は、「こっちの方が使いやすいから」とあっけらかんとしている。
盲目的な愛国主義ではなく、あくまで個人に重きを置く実利主義である。直情的な愛国の表現は「酷(クール)」ではなく、斜に構えた方がイケているといった感じだ。現代中国の若者を形容するはやり言葉は「仏系」である。「まあね」「別に」「どちらでも」を連発し、自己主張の乏しい、冷めた感覚の世代である。マクドナルドやケンタッキー、スターバックスに群がり、ハリウッド映画を何より好む彼ら、彼女らに向かって、アップルやマイクロソフトの製品を使うのは愛国主義に欠けるなどと言おうものなら、みなはしかめ面をするに違いない。愛国心は人一倍あったとしても、かつての激情タイプはすでに廃れ、どこかに余裕が生まれている。ここ数年の間に少しずつそんな変化が生じている。(つづく)
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