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2019-01-25 00:00
(連載2)「植民地支配の慰謝料」請求は無理筋
倉西 雅子
政治学者
第3に、韓国最高裁判所は、2012年5月の判決以来、「違法な植民地支配に基づく強制動員については、日韓請求権協定によっても徴用工個人の請求権は消滅しておらず、大韓民国の外交的保護権も放棄されていない」とする立場を示しています。この問題は日本国の朝鮮半島統治の実態に関わりますが、韓国併合は条約に基づくものであって、同君連合の形態に近い合法的な合邦でした。企業合併にも、経営難に陥った企業を救う形での吸収合併の形態が存在し、また、しばしば国家レベルでも、政府が、財政基盤が盤石な自治体による脆弱な自治体の合併を奨励することがあります。当時の韓国の財政状況を考えますと、日本国による韓国併合は搾取型の植民地支配ではなく、財政移転や投資の方向性や収支を基準として判断すれば、救済型の合併として理解され得ます。
第3点に関連して第4に指摘すべきは、日韓請求権協定の議事録では、「全ての」請求権が対象となる点において両国間で合意が成立していることです(議事録2(a))。2018年の判決における原告は、国家総動員法に基づく徴用工でもないそうですが、徴用の事実の有無にかかわらず、同合意に基づけば、その請求権は解決済みとなるはずです(植民地支配が根拠であるならば、日本国の民間企業に‘慰謝料’を求めるのも筋違い…)。また、韓国の外交的保護権も放棄されていないのであれば、韓国政府こそ、この問題の矢面に立つべきです。言い換えますと、韓国最高裁判所の立場に従えば、韓国政府は、日本国政府に対して植民地支配の慰謝料を求めて日韓請求権協定の破棄と再交渉を申し出るのが筋と言うことになりましょう。その際には、日本国に対し、過去に受け取った経済協力の供与金を全額返済する必要があります。
そして、第5点として挙げられるのは、韓国側は、日本国側にも財産及び請求権が存在している事実を無視している点です。日韓請求権協定の付属する第二議定書では、ひと先ずは、1961年4月22日の交換文書で合意された日本国側の債権について、韓国側の日本国への支払いが定められていますが(債権の総額は凡そ4600万ドルですが、インフラ等の投資残高が含まれるのか、そして、実際に返済、あるいは、経済協力費から差し引かれたのかは不明…)、仮に韓国最高裁判所の論理が通用するのであれば、日本国側も、協定外の個人請求として莫大な対韓請求が可能となります。何故ならば、韓国国民の違法行為から生じた日本国民の損害が甚大であるからです。特に朝鮮半島からの引き上げ時にあって、日本国民の多くが犯罪被害者となる一方で、日本国内でも、朝鮮半島出身者による駅前一等地の不法占拠や日本人虐殺などの事件が頻発しました。人道問題や違法性を以って協定枠外の請求権を正当化できるならば、日本国側もまた、同様の論理を以って韓国に対抗することができます。
細かな点を含めればこれらの他にも問題点はあるのですが、韓国側の対日姿勢は、もはや協定どころか理性の枠までをも超えているかのようです。韓国政府並びに最高裁判所の支離滅裂な論理が韓国固有の自己中心性に基づくとしますと、日本国政府は、公平・中立な第三者(国際司法機関等…)による判断に委ねる方法での解決に努めるべきではないかと思うのです。(おわり)
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