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2019-01-19 00:00
(連載2)TPP11による雇用創出効果の誤算
倉西 雅子
政治学者
TPP11、並びに、日欧経済連携協定では、EUの原則の如き‘人の自由移動’は認められておらず、各国の労働市場は自由化の対象外とされています。このため、これらの協定のメカニズムにビルトインされる形で、労働力の過不足が加盟国間において自動的に調整されるわけではありません(同自律的調整機能がイギリスのEU離脱の原因となっている…)。しかしながら、70万人の新たなる‘人手不足’が既に予定されているとしますと、昨年末の入管法改正で顕著となった、‘移民政策’をめぐる日本国政府の動きは注目されます。
入管法改正に際して新設された新たな在留資格では、5年間で最大34万人の外国人労働者の受け入れを上限として設定しておりますが、その他の永住資格や在留資格等を含めますと、政府は、一般の日本国民の支持や同意もなく、日本国の労働市場の開放に踏み切っております。言い換えますと、TPP11や日欧経済連携協定の成立によって生じる‘人手不足’については、これらの協定の枠外における事実上の‘移民’受け入れ政策で対応しようとしていると推測されるのです。
そして、自由貿易圏の形成とは、国境を越えた競争の激化を意味しますので、労働コストにおいて劣位にある日本国の企業には、国際競争力を高めるために積極的に安価な労働力を求めて外国人を採用する動機が生じます。あるいは、入管法改正で新設された資格では、外国人に対して日本人と同等、もしくは、それ以上の賃金を支払うことを義務付けていますので、既に懸念の声が上がっているように、日本人の所得水準は、加盟国の所得レベルが平準化するまで徐々に低下してゆくことでしょう(先進国の所得水準の低下と新興国の上昇の同時進行による平準化するよりも、新興国のボトムアップによる平準化が望ましい…)。しかも、日本国政府は、日本国内での外国人による起業や外国企業の誘致を推進しておりますので、日本国内でTPP11加盟国の事業者が拠点を設ける場合には、本国出身者を雇用する可能性も高くなります。かくして、日本国は、急激な外国人人口の増加に見舞われ、その対応だけで地域社会が疲弊し、異文化間の摩擦に苦慮するリスクもあります。
米中貿易戦争の影響が広がる中、TPP11や日欧経済連携協定の発効によって日本国内に新たに76万人の雇用が生まれるかどうかは怪しいところですが、自由貿易協定や経済連携協定を締結した結果、日本国が多民族国家へと変貌し、一般の日本国民が様々な危機や困難に直面するとなりますと、果たしてこの方向性が望ましいのか疑わしくなります。その先に何が待ち構えているのか、人々の日常生活から国際体系に至るまで広範な領域で一方的に変化を迫る移民問題は、今年もまた、日本国のみならず、人類が真剣に考えるべき重大な問題となるように思うのです。(おわり)
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