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2019-01-08 00:00
(連載2)国際捕鯨委員会からの脱退に思うこと
岡本 裕明
海外事業経営者
さて、では日本は何をしたかったのか、私はここがよくわからないのです。確かにニュースを読む限りIWCのスタンスは一方的に見えます。しかし、日本がIWCを脱退してまで商業捕鯨に固執する理由もどこまであったのか、これも分からないのです。食道楽の日本ですからきっとうまい料理の仕方を考えるのでしょう。しかし、今だって鯨肉専門の料理店はあります。それが大行列だという話は聞いたことがありません。要は珍味に近いものになっているのではないかと思います。
脱退とは議論を止める、そして国際社会との協調を放棄するということであります。アメリカがパリ条約を脱退するのと同じ。その時安倍首相は残念だとコメントしました。もちろん、脱退することで突然、嫌がらせがあるかどうかは分かりません。しかし、関係国には強烈な印象として焼き付けることになるでしょう。今年の平昌オリンピックのころ、韓国で犬を食べる習慣があることに一部の世界から強い抗議の声が上がりました。同国内でも賛否両論のようですが、日本人もさすが気持ちいい話ではないでしょう。中国ではかつて奇妙なものを食べる美食家クラブなるものがあり、あり得ないものを相当食していたことが暴かれたことがあります。私は香港に勤務していたある日本人から聞いたのですが、生きたサルの脳みそを食べるというのもあったそうで、文明国として強い拒否感を持ったのを覚えています。
つまり、どの国にもあまり自慢できない歴史はあるわけでその歴史を維持する国家と昔話として歴史の中に仕舞う国家があるのだろうと思います。日本は捕鯨の歴史と鯨肉という食を伝えたいという文化を持っています。但し、文化が国民社会一般に商業レベルで水平展開されるものでもないと考えます。
ならば、ここは国際捕鯨員会からの脱退ではなく、文化、歴史、伝統の維持というレベルの捕鯨に対する理解を求めていく方が良かったのではないかと考えています。消費量としては今の調査捕鯨の余り肉でも国民の大多数は困っていないでしょう。皆様、様々な意見があるかと思います。脱退することを捕鯨の話とは切り離し、国際社会に日本の立場を明確に示したという意見もあるかもしれません。ただ、こう言ってはお怒りを買うかもしれませんが、捕鯨を通じた国際社会との断絶は日本の今後の水産事業に大きな試練を与えることになることは否定しません。マグロを含む遠洋漁業に対しても世界の目は厳しくなるでしょう。私はこれは逆効果だったと感じています。(おわり)
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