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2007-04-29 00:00
連載投稿(4)北は南北合意による米介入排除を狙う
武貞 秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
北朝鮮が米国との関係正常化を望んでいるというのは、そのとおりである。ただ、米朝関係正常化に際して、北朝鮮は、米国が朝鮮半島有事に際して軍事オプションを選択しないことを約束するよう求めている。北朝鮮の統一政策の一部としての核戦略を米国が容認することが、米朝国交樹立の条件だと、北朝鮮は考えているのである。朝鮮半島有事の場合とは、北朝鮮内の混乱に伴うものから、北朝鮮による朝鮮半島統一のための解放戦争まで様々な形を考えることができる。北朝鮮が想定するのは、大量破壊兵器が有事に際して米国の介入を阻止するために決定的な役割を果たすシナリオである。北朝鮮高官は、核兵器のことを「究極的兵器」と表現している。それは、最強の破壊力を持つという意味のほかに、「米国が朝鮮半島有事に際して介入をためらう究極の兵器」という意味がある。
韓国との協議により、米軍を削減し、米韓連合司令部を解体し、韓国国防の韓国化を推進したあとで、北朝鮮が米国東部を射程に入れた大量破壊兵器を完成する、というのが北朝鮮のシナリオの最終段階である。いま、北朝鮮が最も力を入れているのが、弾頭の小型化と大量破壊兵器の伝達手段の多様化であるというのは、この説明を裏付けている。「米国東部までが危ないのであれば、あえて朝鮮半島に軍事介入する必要があるだろうか」と米国が真剣に考えるシナリオを北朝鮮が想定していることを意味するからだ。
現実の展開を見ても、いま朝鮮半島では、三つのことが同時進行している。(1)韓国社会の対米意識と対北朝鮮認識の急速な変化、(2)在韓米軍の削減実施と韓国防衛の韓国化、(3)北朝鮮の大量破壊兵器の開発、である。
このことは、北朝鮮から見ると、「韓国と北朝鮮が戦う時代は終わって、米国は朝鮮半島問題で中立的立場に傾斜し、北朝鮮の究極的兵器が突出した状態で残る」というシナリオが可能になったと見えるだろう。米国が朝鮮半島への介入を断念することがあるのだろうか。北朝鮮は米国との平和協定締結を求めてきた。それは、米国が朝鮮半島有事に際して軍事介入しないという保証を北朝鮮に与えることを意味し、米国は、北朝鮮が核を放棄しても、そのような協定の締結に応じるわけにいかない。だが、米本土の安全が脅かされるとき、米議会と米世論が現在のように、韓国防衛のための介入を支持するだろうか不透明である。
それに、南北対話が進展して、分断状態を終結する話合いが進んで、南北連邦制宣言が成立すれば、朝鮮半島は「1国家2政府」になる。朝鮮半島の北半分に対する米国の軍事攻撃は南半分の連邦政府の了解なしには不可能になる。いままでの北朝鮮の統一政策の特徴は、南北で連邦制を敷くということであった。韓国では金大中政権下で「双方の和解と協力が進んだので、連邦制を宣言してもよいのでは」というムードが広がった。そして、北朝鮮は連邦制宣言の意義に言及するようになった。この流れでゆくと、南北の合意で米国の朝鮮半島への軍事的役割が終わるというシナリオも不可能ではない、と北朝鮮は考えているだろう。(つづく)
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