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2018-11-08 00:00
先の日印首脳会談の考察
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
インド人学者と、日印首脳会談の成果などについて懇談した。その内容を紹介したい。同学者は「10月末にモディ・安倍両首脳の会談が行われ、26の覚書が交わされた。日米関係と同じく、閣僚級2+2の立ち上げ、印における新幹線への円借供与など、環境、衛生、農業、宇宙など幅広い分野での相互協力がうたわれた。明文化されていないが対中国が狙いだ。印は、中国の益々ひどくなる強圧ぶりに危機感を強めている。印の周辺国は、中国の援助・融資などで取り崩され、印が自分の経済圏とみなしていたアフリカ東沿岸諸国も浸食されている。ただ、日本と微妙に異なるのは、同じ民主主義国同士として、ある程度の連携はするがまだ途上国として、中国とも歩調を合わせるということだ。AIIBのメンバーであるし、新開発銀行(通称、BRICS開発銀行、NDB、本店は上海)には、総裁を出している。中国から資金援助も受けている。最近、米国は、対中戦略の一環で、とみに印へすり寄ってきている」と述べた。
また安全保障に関して、同学者は、「米国は、印のことを”Major Defense Partner”と呼びだしたり、『太平洋軍司令部』を『インド太平洋軍司令部』に呼び名を変えたりしている。しかし、印は歴史的経緯もあり、米国には全面的には寄り掛からない。武器。装備の大半は依然ロシアからだ。対中国でも、是々非々の対応を目指す。刺激しないように極めて慎重にふるまっている。印中の経済力は、30年前に鄧小平が『改革開放』を開始したころから比べるとだいぶ差が開いてしまった。米の関係者は、中国は人口的にも老いていく、今世紀の中ごろには印が凌駕している可能性もあるなどとおだてるが、やってみなければわからない。中国は、北の国境線では、軍隊が対峙し、隣国パキスタンへ『一帯一路』に名を借りて630億米ドルのインフラ支援などを行い、印を苦しめている。しかし、日本が移動通信システムの第5世代(5G)突入時代を迎え、政治の話を抜きに中国、韓国と商用化に向け共同歩調を進めようとしているように、中国とは連携できるところは手を結んでやってゆくのだ」と述べていた。
さらに同学者は「一方、あらゆる面において対中警戒感は緩めないのだ。米の安全保障関係者と話していて、彼らの対中防衛での日本への期待は大きいが、日本の法的未整備による情報の漏洩を恐れている。日本に来て、軍人の社会的地位の低さに驚愕した。中国の影響力が増しているとして沖縄ばかりが騒がれているが北方の都市の友好団体などの取り込み工作については鈍感だ。中国の南の海上シルクロードにばかり日本の目が行っているが、グローバルな展開を目指す中国は、対北米、あるいは、北極海ルートを通じての欧州への進出も狙っているのだ。北海道太平洋沿岸の港湾は、中継地として是非確保したいところだ。日本人は共産党の人民工作のすごさを軽視している。極めて早い時期から、中国がアイスランドを取り込んでいたことを忘れてはならない」とも述べていた。
最後に日印首脳会談の成果について、同学者は「会談で、安倍首相は『日印両国は核兵器のない世界の実現目標を共有した』と述べ、モディ首相は『核兵器のない世界を目指すことは共通の目標』と対応したが、これはあくまでも日本国内向けの言葉だ。現実として印は核を持つパキスタンと対峙している。報道によれば今年に入り尖閣周辺の接続水域に初めて中国の潜水艦が入ったといわれている。これに対しての、大部分の日本人の鈍感さを米の関係者は心配していた。現在の科学技術の水準において、日本が真に海洋安全保障を、印、米と取り組むならば、原子力潜水艦を使えないということは大きなハンデを負う話になる。今回の協力プロジェクトの内、安全保障関係者が注目しているのは『物品役務相互協定(ACSA)』で、米も期待しているようだ。気の早い印のメディアは、日本の海軍が間もなく印の港にきて給油を受けたりするのだと書き立てたりしている。こうした期待感が裏切られた時の幻滅は大きい」と述べた。
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