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2018-10-23 00:00
INF全廃条約離脱の真意は対中国?
倉西 雅子
政治学者
トランプ大統領は、今月20日、レーガン政権下のデタントの時代に旧ソ連法との間に締結した中距離核兵器の相互廃棄に関する二国間条約であるINF全廃条約からの離脱方針を表明しました。その主因として挙げられたのがロシア側の条約違反行為なのですが、その真の狙いは、急速に核戦力を増強しつつある中国にあるのではないかと思うのです。核関連のニュースとして、先日、NHKのニュースウオッチ9でアメリカの新たな核戦略の策定について報じておりました。その中で、同番組のキャスターは、‘たとえ他国が核の拡大に動いているとしても、力を以って力で対抗するのはどのようなものか’といった趣旨の発言をしています。アメリカの新核戦略の理由が中ロに対する対抗であることを批判しているのですが、仮に、アメリカが対抗措置を採らなかったとしたら、国際社会がどのような状況に陥るのかを想像しますと、背筋が寒くなります。何故ならば、この問題は、‘巨大な犯罪組織が暴力手段を増強させているにも拘わらず、警察の武力が前者よりも劣っていた場合、社会、あるいは、人々の安全はどうなるのか’を問うに凡そ等しいからです。
力が‘ものを言う’状況は、地球上で最も知性に優れた生物である人類にとりまして決して望ましいものではありませんが、残念ながら、現実には、どの国も軍事力を備えざるを得ない状況に置かれています。今日の国際社会における拘束力は‘力’、‘合意’、‘法’が混在していますが、国家間の合意や一般国際法が存在しない、あるいは、これらが拘束力を失った状況下にあっては、平和を実現する方法は凡そ二つあります。その一つは、国家間の合意や国際法を全ての諸国に守らせ得る軍事力(警察力)を有する国、あるいは、国際機関が出現することであり、もう一つは、諸国間にあって力の均衡を保つことです。 戦後の国際社会を概観しますと、国際レベルの警察力として国連が設立されつつも、アメリカが事実上の筆頭警察官の役割を果たす一方で、各地域には力の均衡を実現すべく二国間、あるいは、多国間の同盟関係が結ばれています。
今般のアメリカのINF全廃条約に対しては、核兵器の全面廃棄に向けた流れに逆行するとして落胆の声も聞かれますが、上記の観点からしますと、アメリカの主張にも一理があります。ロシアによる米ロの二国間合意であったINF全廃条約の違反は、最早、‘合意’は拘束力を喪失していることを意味しますし、中国に至っては、そもそもINFの廃棄を義務付ける条約さえありません。一般国際法であるNPTにおいても、中ロの核軍拡は、核保有国の軍縮義務に反しているのです。いわば、中ロは両国とも率先して‘合意’や‘法’を無力化し、‘力’が全てとなる野蛮な時代に人類を強引に引き戻すかの如きです。そしてそれは、中ロ両国が暴力手段に日々磨きをかけ、アメリカを上回る先端的な軍事力を備える日が刻一刻と近づいていることを意味します。
ここに、アメリカのINF全廃条約からの離脱問題は、先の問題提起としてリフレインされるのです。‘暴力国家が警察国家を力で凌駕する場合、国際社会は、どのような事態に直面するのか’という…。この問いに対する答えは言わずもがななのですが、中国の国有企業である中国航天科技集団は、既にミサイル防衛網を突破可能な超高速飛行隊の実験に成功したとされ、同飛行体には核兵器の搭載も可能です。核戦力を含む中ロの軍事的脅威が増す中で対抗措置を採らないという選択は、力が支配する世界にあっては、他者をして自らの死を招くという意味において自殺行為ともなりかねません。これを‘平和’と呼ぶならば、‘平和’とは、暴力による世界支配と言うことになりましょう。マスメディアは、トランプ政権批判に躍起になっておりますが、どちらの選択が真の平和を実現するのか、しばし考えてみる必要があるように思えるのです。
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