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2018-10-11 00:00
(連載1)中国人ICPO総裁失踪事件について
倉西 雅子
政治学者
目下、ICPO(国際刑事警察機構)では、同機構設立以来、前代未聞の大事件に遭遇しています。それは、あろうことか、ICPOの孟宏偉総裁その人が失踪してしまった、という事件です。この事件の発端は、どうやらICPO総裁に中国出身者が就任するという矛盾に満ちた人事にあるようです。
第1の矛盾は、国際社会における中国に対する認識不足、あるいは、先走った過剰期待に起因しています。共産主義イデオロギーに基づいて建国された中国には、未だに政治犯が存在しています。共産党が敷く一党独裁体制に反対を表明する、‘自治区’が独立を主張する、政府が決め、実行している政策を批判する…といった政治的発言を国民が口にすれば、即、犯罪者として処罰の対象となります。
一般国民のみならず、特権階級とされる共産党員もまた安心してはおられず、権力闘争に敗れた要人、あるいは、最高権力者のライバルとなる党員達もまた‘犯罪者’のレッテルを張られて失脚する可能性があります。現在、習近平国家主席は、腐敗撲滅運動の名目で‘抵抗勢力’となり得る要人たちを次々と粛清しており、孟宏偉総裁の失踪も、一連の粛清に絡んでいると指摘されています。言い換えますと、中国では、政治と経済どころか政治と刑事も分離されておらず、警察活動に関する国際組織のトップを輩出する国としては不適切であると言わざるを得ないのです。
第2の矛盾は、国際刑事警察機構のトップが、自らの出身国から犯罪(汚職)の廉で身柄を拘束されている疑いが強いことです。ここに、犯罪を取り締まるべき国際レベルの警察トップが‘犯罪者’であるという重大な矛盾が生じています。もっとも、仮に、孟宏偉総裁が実際に汚職に手を染めていたならば、人物評価が不十分であったという点で、同氏を総裁のポストに就けた国際レベルの人事に責任があるのですが、実際には、上述したように権力闘争の犠牲者であった可能性の方が高いものとも推測されます。とは言え、中国政府は、同氏の失脚の原因を政治的粛清であるとは決して認めず、汚職によるものとして押し通そうとするでしょうから、真相はどうであれ、表向きは、世界の警察のトップが犯罪者という構図のみが残されてしまいます。(つづく)
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