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2018-10-06 00:00
王毅外相のウイグル発言から考える
倉西 雅子
政治学者
中国によるウイグル人に対する大規模な弾圧行為に対し、目下、国際社会からの批判の声は高まる一方です。強まる対中批判に耐えかねたのか、中国は、国連総会をウイグル弾圧批判に対する弁明の場とし、王毅外相が壇上で熱弁をふるったそうです。中国の弁明戦略の基本方針は、問題の焦点をテロ対策に絞ることです。論理構成としては、(1)イスラム過激派はテロリストである(ウイグル人は、そのイスラム教徒である)、(2)住民の安全のためにテロリストを取り締まるのは政府の義務である、(3)この義務において全ての政府が同じことをする、そして、(4)(国家として当然のことをしているので)中国は悪くない、という結論に導いています。一読しますと、どこにも論理破綻がないように見えます。しかしながら、この王外相の演説は、肝心な部分については沈黙しています。それは、第一に、(3)にある‘同じこと’の内容であり、第二にウイグルには独立問題があるという事実です。
報道によりますと、王外相は、中国が行っている具体的なテロ対策措置については、全く触れていなかったそうです。中国側は全世界の諸国に共通するテロ問題として扱いたいのでしょうが、中国に対する批判の焦点は、中国が誘導したい方向とは別のところにあります。国際社会は、中国が実行しているウイグル人に対する非人道的で残酷な‘ジェノサイド’に抗議しているのであり、テロ対策に反対しているのではないのです。おそらく、中国は、自国が具体的に‘していること’が問題視されていることを十分に自覚しているからこそ、沈黙戦略で論理構成意図的にから外し、‘ないこと’にしようとしたのでしょう。
そして、何よりも中国は、ウイグルには独立問題があることを頭から無視しています。中国の行政区の名称である新疆ウイグル自治区の‘新疆’とは、‘新たな土地’を意味しています。つまり、‘新疆’とは、18世紀に至り、清国が同地を征服した際に命名した名称であり、漢人の固有の地ではないのです。今日の国際社会にあっては、民族自決の権利が原則として認められておりますので、その大半がトルコ系ウイグル人であり、イスラム教徒でもあるウイグル人には独立国家を有する権利があります。ここでも、中国は、独立運動の存在が表面化すれば、もはやテロへの一点争点化の誘導は通用しなくなることを怖れて、独立問題をも‘ないこと’にしようとしたのでしょう。
これらの二つの沈黙を考慮しますと、王外相の演説は、聴衆を惑わす狡猾な詭弁と言わざるを得ません。中国は、国連演説において批判点をずらし、ウイグル問題の焦点を巧妙にすり替えたのですから。果たして、同演説は、会場から満場の拍手を以って支持されたのでしょうか。トランプ大統領の演説後の会場の反応には失笑もあったとされていますが、中国の王毅外相の演説に対しては、それが耳に聞こえる声にならず、心の内にとどまるものであったとしても、ブーイングの嵐だったのではないでしょうか。
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