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2018-09-16 00:00
(連載1)中国の対米外交に出口戦略はあるか
牛島 薫
非営利団体職員
いわゆる「米中貿易戦争」が勢いづいている。経済的次元とはいえ中国も米国も互いに矛を収める様子を見せていない。さる8月の22日と23日に、両国間の事務レベルでの貿易交渉が行われたがさしたる成果はなかったようだ。トランプ大統領が指摘する中国の不公正な貿易慣行や知的財産権問題などに対して、北京政府は相手が納得する打開策を示さなかった。今回の米中貿易交渉は中国の時間稼ぎという見方が多いが、時間稼ぎというのは何らかの打開策が控えていてこそ意味がある。はたして北京政府に対米緊張緩和策があるのだろうか。
ところで、中国は2015年に「中国製造2025」を提唱して以来、国内製造業のハイテク化・高付加価値化に邁進している。それまで、国際分業の観点から中国を「世界の工場」として好意的に捉えていた米国の立場も今や大きく変わっている。中国の製造業が労働集約型経済から脱却し高度化が進めば、当然米国の基幹産業であるハイテク分野での競合するからである。日本もかつて同様のことを経験している。紡績業主体の日本経済が徐々に工業主体へと移行したことで、米国の製造業と競合し激しい貿易摩擦へと発展したのだ。しかしながら、当時の日本と今回の中国では異なる部分も多い。外資系企業に対する技術移転の要求や、国内の外国企業への差別待遇を国家レベルで敢行する中国は、自由民主主義諸国の行動とは一線を画している。この点については、米国だけでなく日欧を含む先進工業国はおしなべて問題視している。中国が白書「中国と世界貿易機関(WTO)」まで出して「保護主義に反対し自由貿易を守る」と声高に叫んでも目立った賛同国が出てこない所以である。
このまま中国に妙案がないまま事態が推移すれば、米国政府は躊躇なく2000億ドル相当に及ぶ第3の大規模制裁を発動するだろう。いうまでもなく、これは日本にとっても好ましからざる展開だ。なにしろ日本にとって米中両国は輸出入ともに4割程度を占める巨大な貿易相手国であり、切っても切れない経済関係にある。また、世界の二大軍事大国である両国が真正面から対立することは安全保障上からも歓迎されることではない。もちろん、事態の打開には米国と中国の双方の賢明な動きが求められるわけだが、日本としてはまずは大切な隣国である中国に対して、実体験を踏まえた助言をしてみたい。日本は戦前にも戦後にも、米国との激しい対立を幾度となく経験している。
そこで中国に参考にしてほしいのは、以下のエピソードである。これは、のちに内閣総理大臣になった幣原喜重郎が、まだワシントンの日本大使館で参事官を務めていた頃、米国がパナマ運河の運用をめぐり、外国船に差別的な関税を課したときの話である。当時は第一次世界大戦前夜で、カリフォルニア州において排日移民法が成立するなど日米関係が著しく悪化していた。そんな折、幣原喜重郎が相談したのが在米英国大使のブライス子爵だった。当時世界最大の海洋大国であった英国にとってもパナマ運河の重要性は高かった。幣原は、英国が米国の差別的な運河通行税に対し抗議し続けるのではないかと考えていた。(つづく)
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