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2007-04-15 00:00
「東アジアFTA」の次に「東アジア関税同盟」を
山下 英次
大阪市立大学大学院教授
今月10日の韓国訪問時に、中国の温家宝首相は、韓国側に中・韓FTAを提案した。これは、今月3日、米・韓FTAが合意されたことを踏まえたものである。米・韓FTAが成立すれば、中国は韓国にアプローチしてくるのではないかということは、専門家の間ではかねてから予想されていたものである。ASEANと日・中・韓3カ国との間のFTAは、すでにほとんど成立寸前まで来た。 まず、ASEAN域内では、2002年1月からAFTAが発効している。中国・ASEAN FTA(ACFTA)は、モノの分野では、2004年11月に調印され、サービス分野でも2007年1月に調印された。中国・ASEAN間では、2010年1月1日から完全な自由貿易体制を目指している(ただしCLMV諸国とは2015年から)。韓国・ASEAN FTAも、2006年5月に調印された。
日本は、中国や韓国と異なり、ASEAN諸国との2国間EPAを優先させてきた。これまでに、シンガポール(2002年1月)、マレーシア(2005年12月)、フィリピン(2006年9月)、タイ(2007年4月)との間で、EPAを調印した。また、インドネシア(2006年11月)とブルネイ(2006年12月)との間でも、大筋合意に達している。すなわち、ASEAN6カ国との間では、日本も概ね2国間FTAが成立しつつある。別途交渉されている日本・ASEAN EPAも、来月あたりに大筋合意される見通しとなったようである。
あとは、日・中・韓3カ国の間でFTAが合意されれば、事実上、「ASEAN+3」ベースで、「東アジアFTA」が成立することになる。日・中・韓3カ国間のFTA合意には、まだ容易ならざる部分も多々あろうが、その次に、何を目指すべきかを考える時にきている。私は、かねてより中長期的には、「アジア版EMS」を目指すべきであると主張しているが、その前のより近い目標も必要である。地域統合の推進にとって一番重要なのは、域内のcohesion(結束)を高めることである。そのためには、域外との違いを明らかにする必要がある。良し悪しは別にして、すでに米・韓FTAが合意された。ASEANも米国とのFTAを検討中であり、日本国内でも日本経団連を中心に日・米FTAを要求する声もある。
このような状況下では、東アジア域内と他者との違いを強調するためにも、次の段階として、「東アジア関税同盟」を目指すべきではないだろうか。 ヨーロッパは、ちょうど50年前のEEC条約(ローマ条約)で、関税同盟を目指し、1968年1月1日、それを実現させた。また、メルコスール(南米南部共同体)は、1995年1月1日、関税同盟として発足し、中長期的には共同市場を目指している。また、メルコスールは、元々は、アルゼンチンやブラジルなど南米の南部の枠組みであったが、2006年7月、ヴェネズエラが加盟調印したことから南米全体の枠組みへ進化した。南米は、今後、米国やメキシコが希望するFTAA(米州自由貿易地域)ではなく、これをベースに、南米共同体(CSN)を目指していくことになろう。
このように、欧州も南米も関税同盟からスタートした。ベラ・バラッサの経済統合の5段階論(1962年)によれば、FTAは、その第1段階、関税同盟は第2段階、共同市場は第3段階である。ちなみに、EUは、現在、第4段階である経済同盟を完成させる途中の段階にあるとみることができる。計量的なシミュレーションでも、FTAよりやはり関税同盟の方が、域内諸国に対する経済効果が大きいとの結果が出ている。
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