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2018-09-11 00:00
(連載2)自由貿易主義で国家は何を失うのか?
倉西 雅子
政治学者
古典的な自由貿易主義理論は‘予定調和’を説いており、自由貿易主義、あるいは、グローバリズムは、その理想を実現しさえすれば、自動的に全ての諸国に富をもたらすとする錯覚を与えています。しかしながら、現実は、貿易収支の均衡も互恵的な富の配分も実現するわけではなく、誰もが‘予定調和’に懐疑的にならざるを得ないのです。そして、この現実が明らかにしたのは、一旦、自由貿易協定や経済連携協定を締結してしまうと、国家による救済・調整機能が失われるという点です。
この現象は、EU加盟国であるギリシャのソブリン危機でも見られましたが、同国では、条約の縛りにより(1)から(3)までの政策を採ることができず、主として(4)に頼るしかありませんでした。通常の経済協定では通貨統合を含みませんので、(2)の政策を採ることは可能でも(それでも、他の加盟国から為替操作として批判されるかもしれない…)、関税率や輸入量の見直しによって救済・調整機能を果たすことは最早できないのです。
今日、TPP11が発足する見通しとなり、RCEPについても年内大筋合意に向けた動きも見られます。しかしながら、1993年に欧州市場が誕生した際に、多くの人々が‘バラ色の未来’を夢見たものの、現実は思い描いていた通りにはなりませんでした。TPP11等の枠組でも、発足には漕ぎ着けたものの、その後、国際収支の不均衡等に起因して金融危機、財政危機、並びに、通貨危機をはじめ、深刻な経済問題に直面した加盟国が出現した場合、一体、どのように対処するのでしょうか(EUのような救済の仕組みもない…)。
多国間による広域的経済圏の形成は、同時に、政府が、全てではないにせよ、経済分野で発生する危機や問題に対する有効な政策手段を失うことを意味します。現実を見つめますと、自由貿易主義の危うい理想を貫くよりも、国家の救済・調整機能を維持し、内外の経済が調和するよう、これらを上手に活かすことこそ肝要なのではないかと思うのです。(おわり)
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