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2018-09-05 00:00
漂流する北朝鮮問題
岡本 裕明
海外事業経営者
トランプ大統領はポンペオ国務長官に訪朝予定のキャンセルを指示しました。前回の訪朝の際に明白な果実がなく、今回も金正恩委員長に会える確約がないことから「行ってもしょうがない」と判断したのでしょう。ディールする価値がない相手のところにわざわざ行く必要はない、というポジションかと思います。思い返せば6月にトランプ大統領がシンガポールで金正恩委員長と会談した際、まるで新時代が築かれるような発言を繰り返し、核の脅威はなくなったとまで言い放っていました。つまり、緊張関係が緩む、ということで、そこで得したのは北朝鮮のみならず、中国とロシアでありました。会談したトランプ大統領がそういうならもういいのだろう、という緩んだ形が中朝国境当たりのビジネスの再活性化につながっています。
表面上、北朝鮮は弾道ミサイル実験をしなくなりましたが、その真意はどこにあるのでしょうか?折しも北朝鮮に拘束されていた日本人が「追放」という形で釈放されるようです。人道的理由としていますが、北朝鮮はどこに向かっているのでしょうか?北朝鮮とアメリカの立場の違いは明白です。非核化が第一義とアメリカが主張しているのに対し、北朝鮮は体制保証や制裁解除を優先させる立場にあることです。事実、非核化と言っておきながら寧辺の核関連施設の稼働を続けるなどの行動が見られ、アメリカの求める方向とは真逆の状態にあります。また、韓国の文大統領が9月に平壌での南北首脳会議を見込んでいるほか、習近平国家主席の訪朝も噂されています。9月9日の北朝鮮建国70周年でも大規模なパレードとなりそうで国の威信をかけるようにも見受けられます。
個人的には北朝鮮から核をとったらただの貧乏な国でしかなく、アメリカが必死に交渉しようとする動機もなくなります。つまり北朝鮮からすれば何が何でも核の放棄はしないポジションにあるのではないでしょうか?一定の強気の立場を貫きながら中国、韓国、はたまたロシアとディールするのでしょう。最終目標は北が主導する南北統一、ないし北が圧倒的に有利な平和条約締結ではないかと考えています。以前から何度も指摘していますが、朝鮮半島の長い歴史の中で争いごとが多かったのが半島情勢です。そしてその主導権や影響力は半島の根元に近い方が有利という歴史もあります。冊封関係もつ中国が控えているからでしょう。今、韓国の経済情勢は決して芳しいとは言えません。トルコの通貨ショックを機に新興国の苦境が伝えられていますが、韓国もその枠組みに入るのではないか、と見られています。これは文大統領が北朝鮮に余計にすり寄る背景にもなりえると言えます。
対北朝鮮政策についてはぐっと締め付けを強化すべきでしょう。アメリカは北朝鮮により厳しい態度を示すべきですし、中国との貿易戦争ディールの中で北朝鮮制裁の強化を条件に加えるぐらいの圧力はかけ続けるべきです。トランプ大統領が金委員長にずいぶん優しいメッセージを送っていますが大統領の心理からすると相手の出方が読めない苦しさが見て取れます。経済的に破綻していると言われ続けてすでに何十年もたっていますが、破綻しません。それなりの地下経済網が発達しているからでしょう。ここは一度締めなおす気構えが必要かと思います。
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