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2018-08-01 00:00
日本共産党は「生産手段社会化」の具体的モデルを示せ
加藤 成一
元弁護士
日本共産党は、科学的社会主義を標榜し、綱領において資本主義社会を超克した後の「未来社会」として、社会主義・共産主義社会の実現を目指すと規定している。そして、その内容として、主要な生産手段の所有、管理、運営を社会の手に移す「生産手段の社会化」を掲げている。これによって搾取を廃止してすべての人間の生活を向上させ、貧困をなくし、労働時間を短縮し、利潤追求をやめ、経済の計画的運営により不況を防ぎ、環境破壊や、社会的格差をなくし、生産力の飛躍的発展を図るとしている。
しかし、共産党はあたかも「生産手段の社会化」が万能薬でバラ色の如くみなしているが、旧ソ連、旧東欧、改革開放前の中国、ベトナム、キューバ、ラオス、民主カンボジア、北朝鮮などの社会主義、共産主義国の歴史を見れば、「生産手段の社会化」には非民主的で強権的な党官僚支配、技術革新の遅れ、低生産性、低成長など深刻な問題があり、必ずしも共産党が言うような国民生活の向上や生産力の飛躍的発展をもたらすものではなかったことは明らかである。
従って、もし共産党が政権を獲得した場合に、綱領に基づき「生産手段の社会化」を実行したとすれば、東証一部の日本を代表する、トヨタ、日産、三菱自動車、日立、ソニー、パナソニック、三菱重工、大林組、新日鉄住金、昭和シェル、出光興産、三菱商事、三井物産、武田薬品、ユニクロ、三菱UFJ、三井住友、野村証券、JR東海、日本郵船、などの大企業は国有化ないし公有化され、その経営は党官僚および国家官僚によって支配されるであろう。そして、一部市場経済が導入されるとはいえ、綱領によれば経済が計画的に運営されるから、企業の自主性は厳しく制限され、基本的には国家の計画に基づき生産、流通が行われるであろう。しかし、そうなると、企業間の競争原理が働かないから、技術革新が遅れ、生産性が低下し、日本の国際競争力は深刻な打撃を受けるであろう。その結果、マイナス成長、貿易収支・経常収支の大幅赤字、失業率の上昇、賃金の低下、税収の減少、福祉予算の削減などの恐れが生じるであろう。
不破哲三前日本共産党委員長は、変革の手段・方法について自分の手を縛らないため、社会主義の青写真化に反対している(不破哲三著「科学的社会主義の運動論」32頁以下。1993年11月新日本出版社刊)。しかし、共産党は綱領であたかも「生産手段の社会化」が万能薬でバラ色の如く主張する以上は、逃げずに、「生産手段の社会化」により、上記の日本を代表する大企業が国有化ないし公有化されること、その経営が党官僚及び国家官僚によって支配されること、それによる国民生活及び日本経済への影響について明確にすべきである。そして、国政選挙等においても「生産手段の社会化」について抽象的ではなく具体的モデルを示して、これを堂々と主張し、国民の判断を仰ぐべきである。そうでないと、共産党が政権を獲得した場合に、国民はどこに連れていかれるか分からないからである。
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