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2018-07-30 00:00
(連載1)自由貿易には勝者も敗者もいない?
倉西 雅子
政治学者
米中貿易戦争を受けて、中国は、理論面からアメリカの根拠を崩すために、‘自由貿易には勝者も敗者もいない’とする経済学者の説を持ち出しています。しかしながら、この説、現状を見ますと、万人を納得させるほどの説得力があるとは思えないのです。多くの人々は、TPP11であれ、RCEPであれ、広域的な自由貿易圏が形成されれば、全加盟国は、自動的に繁栄を手にすることができるという幻想を抱いています。
日本国政府も同様であり、自国を含めて特定の加盟国が‘負け組’になるシナリオなどは想定されていません。ところが、ヨーロッパを観察しますと、1993年に欧州市場が誕生した際の熱狂やユーロフォリアの時代は過ぎ去っております。その後、ギリシャを始めとした経済基盤の脆弱な加盟国がソブリン危機に見舞われると共に、結局、欧州屈指の経済大国であるドイツの‘一人勝ち’を帰結したとする評も聞こえてくるのです。自由貿易には、勝者も敗者もいないはずであったにも拘わらず・・・。
理論と現実との間に乖離が生じる場合には、一般的には、理論そのものに欠陥があるものです。自由貿易については、確かに、比較優位による最適な国際分業の実現、資源の効率的配分の達成、あるいは、市場の自律的調整力の作用など、様々なメリットが論じられてきました。しかしながら、精緻な理論とは言い難く、現実との間に埋めがたい隙間があるとしか考えようがないのです。実際に、今日、世界規模で進展しているグローバル化に伴って顕著となっている現象は、政府による関税や非関税障壁の撤廃や削減に伴う競争の激化です。競争である以上、そこには、自ずと勝者と敗者が生み出されます。
すなわち、広域的自由貿易圏、あるいは、グローバル市場の誕生とは、国家であれ、企業であれ、一般勤労者である国民であれ、‘弱肉強食’を原則とする激しい競争に晒される時代の到来を意味するのです。そして、市場は国内市場を越えて拡大するのですから、大競争時代において最も有利となるのは、‘規模’に優る国や企業となるはずです(労働力が豊富な国では安価な労働コストとして‘規模’が反映される・・・)。ところが、自由貿易理論の殆どは、肝心の‘規模’を無視してしまっているのです。(つづく)
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