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2018-07-27 00:00
(連載2)「トランプ弾」大衆の食直撃
田村 秀男
ジャーナリスト
中国人の食にもっと広範な影響が及びそうなのは、もちろん大豆である。米国の対中大豆輸出量は昨年3300万トンで、米国産は中国の大豆総需要のうち、約3割を占める。輸入大豆は搾って食用油になり、粕(かす)が豚や鶏の餌になる。米国の大豆産地が鶏と同様、中西部のトランプ支持基盤とはいえ、その輸入コスト上昇や量の不足は、中国人全体の胃袋と家計に影響する。
トランプ弾の規模が大きくなればなるほど、中国のマクロ経済が受ける打撃は計り知れなくなる。というのは、中国共産党が統括する金融経済モデルは西側先進国と違って、中央銀行である人民銀行が流入外貨、すなわちドルを買い上げては人民元資金を発行し、国有商業銀行、国有企業、地方政府へと流し込む。人民銀行の総資産に占める外貨資産は66%に上る。
日米欧は国債などの証券を市場から買い上げて資金発行するシステムで、外貨とは無縁だが、中国は外貨頼みだ。その外貨の主源は対米貿易黒字、次は外国からの対中直接投資である。対米黒字はコンスタントに拡大しており、文字通り中国金融を支えている。トランプ氏の作戦はその資金源を断つというわけで、この関税攻勢の実相はカネ版「兵糧攻め」とでも言うべきだ。中国の経常収支黒字は1200億ドルだから、トランプ弾の攻撃が重なれば、国際収支が赤字に転落しかねない。すると、中国の金融システムは機能不全に陥る恐れが生じる。
折しも、中国景気は下降局面に入っている。ドルの裏付けのない人民元を増発し、金融の拡大を図れば、通貨価値は下がる。つまり高インフレになる。中国人は伝統的に紙切れのカネを信用せず、金やドルの保有に走る。それを共産党政権はわかっているからこそ、管理変動相場制度によって、人民元をドルに事実上ペッグさせてきた。既に元売り圧力は高まり、当局による買い支えにもかかわらず、じりじりと元安が続く。資本逃避に加速がかかりそうだ。上海株の下落は企業収益や景気の先行き不安を反映している。胃袋も経済も悪くなると、何が起きるか。大衆の不満の高まりであり、独裁権力を固めた習氏に対し矛先が向かう。それを見た党内の反習派が勢いづく。その前兆が見え始めたのだ。(おわり)
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