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2018-07-17 00:00
米中貿易戦争における習近平氏の虚勢
田村 秀男
ジャーナリスト
トランプ米政権は7月6日、知的財産権侵害に対する制裁として、中国からの輸入品340億ドル(約3兆7000億円)分に25%の関税を上乗せした。中国側も同日に同額の報復関税をかけた。米側はこのあとさらに160億ドル分を追加制裁し、中国側もやはり同じタイミング、同額の追加報復で対抗する。中国の習近平国家主席・共産党総書記は徹底抗戦する構えだ。習氏は先日、北京で開かれた欧米多国籍企業20社首脳との会合で、「欧米では左のほほを殴られたら右のほほを差し出せ、との考えがある」とした上で、「殴り返すのがわれわれの文化だ」と語ったという(6月26日付米ウォールストリート・ジャーナル=WSJ=紙)。
敵が一歩前に出れば一歩下がり、敵が一歩下がるときに二歩前に出る毛沢東以来の共産党の伝統戦術をとらない。習氏は一歩も引かないというが、この戦いはどうみても中国側の分が悪い。中国の対米貿易は輸出が輸入を圧倒している。トランプ大統領はそれを見越した上で、中国が報復すれば、制裁対象額をさらに2000億ドル追加すると示唆している。習政権が同額で対抗しようとしても、中国の対米輸入は1500億ドル前後にとどまる。それでも全面対決するなら米国からの輸入全てに高関税をかけなければならないが、そうなると中国企業は米国に依存する主要部品や機械設備などのコスト高に苦しみ、収益力や輸出競争力の大幅低下を招く。
報復金額で対抗できないとなると、進出米企業や対米輸入品に対するさまざまな許認可を遅らせるなど、党官僚がいつもよくやる陰湿な嫌がらせを駆使するだろう。さらに、党は得意の大衆動員による米国品不買運動をしかける可能性もあると、WSJ紙は警戒している。しかし、党独裁体制特有の不透明きわまりない行政や司法の妨害行為や不買運動の市民への強制は米企業ばかりでなく外国企業全体に「チャイナリスク」を自覚させ、対中投資を細らせる。6月上旬のカナダでの主要7カ国(G7)首脳会議宣言では、中国の不当な貿易・投資のルール違反が批判されている。
実のところ、中国経済全体を見渡すと、中国は今や米国との貿易戦争に耐えられるほどの体力はない。国際決済銀行(BIS)統計によれば中国企業の借金は昨年末で20兆ドル、国内総生産(GDP)の1・6倍で、米国の同14兆ドル、GDP比7割を大きく超える。しかも、企業と金融機関などの外国からの借り入れは年間で2500億ドルも増やしている。対米輸出が急減し、しかも企業収益が悪化すれば金融危機に陥りかねない。企業の国際競争力を維持し、輸出をてこ入れするためには人民元レートの切り下げに踏み切るしかないが、そうすると、資本逃避が加速し、やはり金融危機の恐れが高まる。まさに出口なし、習氏の虚勢極まれりである。
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