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2018-07-10 00:00
ドイツの軋み音
岡本 裕明
海外事業経営者
ドイツの民間最大手銀行の一つ、ドイツ銀行の株価は近年のドイツの盛衰を表しているかもしれません。直近ではついに9ユーロを割り込みその下落は止まりません。NY市場では同行の株価はもっと顕著でリーマンショック前には150ドルを超えていたものが今、10ドルをかろうじて超える程度であります。つまり、15分の1であります。ドイツ銀行の経営に問題があるとささやかれ始めたのは昨日今日のことではありません。一時は天文学的なデリバティブの損失があるとも言われましたが、それ以外にCoCo債問題を含め、経営的に無理をし過ぎたところがあり、厳しい状況に立たされています。最近ではアメリカのFRBが行った金融機関35行のストレスチェックの資本計画において同社のアメリカ子会社が35行で唯一、不合格となっています。つまり、噂はやっぱり本当なのか、という疑惑に信憑性すら出てきているのです。
もう一つ、注目しなくてはいけないのはドイツ銀行の筆頭株主が中国の海航集団であることです。海航集団は王岐山副主席の後ろ盾のもと、巨大なコングロマリットになったもののその借入金額は12兆円以上に上るとみられ、経営危機にあるとされています。同社の資金繰りのためにドイツ銀行の株式を複数回、売却したことも明るみに出ており、ドイツ銀行の株価がさらに下押しする要因となっています。ドイツ銀行はフォルクスワーゲンやボッシュのメインバンクであり、ドイツ銀行/海航集団のラインがドイツ自動車業界の肝を握る状況になっています。またベンツも別の中国企業が筆頭株主となっており、中国とドイツの密接な関係がうかがえます。
そんな厳しい状況にあるドイツの代表的銀行を横目にメルケル首相も一時のパワーは全く感じさせられない防戦一方となっています。難民問題をめぐり、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と連立与党のキリスト教社会同盟(CSU)の間で亀裂が入っています。難民に対して厳しい姿勢を見せるCSUがメルケル首相と折り合いが付かず、CSUの党首で内相を務めるゼーホーファー氏が一時、内相を辞める姿勢を見せるなど混乱が広がっていました。今回はかろうじて紐一本でつながった感がありますが、この二党間の分裂が明白になればCDUは過半数を取れなくなり、メルケル首相の政治生命が脅かされるとみる筋もあります。
ドイツは欧州危機の頃、EU内における圧倒的地位でドイツ帝国復活とも揶揄されてきました。しかしながらメルケル氏の左派的思想に対してトランプ大統領にみられる自己中心主義が世界中で芽生え、難民に対する根本思想も大きく変わってきました。欧州ではEU離脱を宣言している英国をはじめ、イタリアやハンガリーなど多くの国家が保守的姿勢に変わり、メルケル首相の立場は時代の流れとは異なり、厳しいかじ取りと言わざるを得ません。またドイツは中国との連携を強めることでウィンウィンの関係を築き上げてきたのですが、ここにきて中国国内の経済問題顕在化とともにルーズルーズの関係に逆転したことでその先行きには暗雲が漂ってきているのかもしれません。W杯で世界ランキング1位のドイツが屈辱的敗退をしたのも何かの予兆なのでしょうか?
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