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2007-03-31 00:00
連載投稿(6)日本は世界の多極化を見据えよ
山下 英次
大阪市立大学大学院教授
これまで5回にわたって述べてきたように、「ASEAN+3」の枠組みは、1990年12月のマハティール構想に端を発し、ASEAN諸国と韓国が中心となって、米国の反発にもかかわらず粘り強く営々と築き上げてきたものである。そして、2001年11月には、日本を含む全13カ国のトラック2(半官半民)の代表によって構成されるEAVG(東アジア・ヴィジョン・グループ)の最終報告書で、「ASEAN+3」の枠組みで長期的に東アジア共同体を目指すべきであることが謳われた。それを受けた13カ国の政府代表によって構成されるEASG(東アジア・スタディ・グループ)が2002年11月にまとめた最終報告書では、東アジア共同体を目指すべきであるとは明確には謳われていないものの、イントロダクションの部分で、「EASGのワーキング・グループは東アジア共同体の建設に向けた努力の必要性を認識した」と記している。
すなわち、東アジア地域統合を、「ASEAN+3」の枠組みで目指そうというのは、13カ国の政府間で概ね成立しているコンセンサスなのである。私は、昨年12月、クアラルンプールで開催された「第4回東アジア・コングレス」にスピーカーとして参加したが、合計34名の出席者(うち7名は日本人)のうち、地域の枠組みとして「ASEAN+3」より東アジア・サミットを重視すべきとしたのは、日本から来た安全保障関係のある学者一人だけであった。他の出席者は、日本の現役官僚一人を含めすべて、「ASEAN+3」を重視すべしとの意見を表明していた。
東アジア共同体は、中国が中心となる枠組みとして日本政府は警戒しているようであるが、すでにみてきたように、日本を含めた東アジアの13カ国がすでにそのような方向を打ち出してきたのである。日本政府は、そこでは主導権を取れないと感じているのかもしれないが、もしそうだとしたら、それは日本が域外の国から独立した路線を取れないからに他ならない。そのようなことを背景に、日本政府は、昨年11月30日、麻生外務大臣が「自由と繁栄の弧」(”the Arc of Freedom and Prosperity”)を発表したのかもしれない。しかし、3月23日付け本欄で、石垣泰司教授が正しく指摘しているように、このコンセプトは東アジア共同体とは相容れない。
日本政府は、現在、「自由と繁栄の弧」を外交政策の「主」とし、東アジア共同体を「従」としているようであるが、それは主客転倒というものである。私も、ユーラシア大陸における「自由と繁栄の弧」といった外交政策も必要とは考えるが、日本の長期的国益を考えると、東アジアの地域統合の推進の方が遥かに重要である。世界は、様々な意味で、多極化に向かってすでに大きく歩みだしたのであり、米国の一極支配が今後とも長期にわたって続くことを前提とした外交政策を採るとしたら、それは早晩、破綻することになろう。東アジアは、いずれ世界最強の経済地域になるが、米国はおそらく今後急速に衰退していくのではないだろうか。ブッシュ政権の政策遂行上の愚行の連鎖は目を覆うばかりであり、それを暗示させる。(おわり)
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