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2018-04-18 00:00
加計学園「獣医学部新設問題」の本質
加藤 成一
元弁護士
学校法人「加計学園」(岡山市)による獣医学部新設計画について、平成27年4月2日首相官邸で当時の柳瀬唯夫首相秘書官が愛媛県や今治市などの関係者と面会した際に、「首相案件」などと発言した旨が記載された愛媛県職員作成の「忘備録」(メモ)の存在が明らかになった。立憲民主党、共産党などの野党は、これは安倍首相の関与を示す「総理の意向」や「加計ありき」を裏付けるものと主張し、さらに、加計学園による獣医学部新設計画を知ったのは、新設計画が国家戦略特区諮問会議で認定された平成29年1月20日とする安倍首相の国会答弁の矛盾を追及し、柳瀬元首相秘書官らの証人喚問を要求している。柳瀬元首相秘書官は面会の事実や発言内容そのものを否定している。同秘書官による発言の有無、内容、趣旨や、「メモ」の正確性については精査が必要であるが、面会したとされる愛媛県側は複数であること、面会をせずに「メモ」だけを捏造する理由に乏しいこと、「メモ」が農水省などの役所にも渡っていること、面会の有無について同秘書官は「記憶する限り無い」と述べ完全否定をしていないこと、などの状況証拠を総合すると、面会の事実自体は否定できないと考えられる。
問題は、「首相案件」と発言したかどうかであるが、複数の関係者が同席していたこと、「メモ」作成については同席者との間で「メモ」内容の確認が行われた可能性もあること、などからすれば、「首相案件」またはそれに近い同様の発言があったと推認できよう。そうだとすれば、当該「メモ」の趣旨が問題となるが、「メモ」には、(1)本件は首相案件となっている、(2)構造改革特区より国家戦略特区の方が勢いがある、(3)四国は獣医大学の空白地帯であり、その解消は鳥インフル対策などで農水省なども歓迎する、(4)他の獣医大学との差別化や自治体の熱意が重要である、などが記載されている。これらの文言からは、国家戦略特区による岩盤規制改革が安倍内閣の成長戦略の目玉政策であるから、鳥インフル対策などを考えれば獣医大学の空白地帯である愛媛県と今治市及び加計学園による国家戦略特区での獣医学部新設提案は、自治体の熱意次第では認可される可能性がある旨を示唆したことが読み取れる。
そうすると、「首相案件」とは、約50年ぶりの四国における獣医学部新設計画が安倍首相の進める岩盤規制改革にも該当する案件であることを示す趣旨のものと解される。「メモ」内容には法律上の違法性や不当性は認められず、特段公正性や公平性を害するものとも言えない。なお、安倍首相は、加計学園による獣医学部新設計画を知ったのは、新設計画が諮問会議で認定された平成29年1月20日である旨の国会答弁をしているが、重要な点は、本件獣医学部新設に関する事業認定のプロセスが適正であったかどうかが問題であり、安倍首相が新設計画を知った日時の如何は重要ではない。野党は、内閣府が京都産業大学による獣医学部新設提案を意図的に排除し、安倍首相の「腹心の友」である加計幸太郎理事長経営の加計学園を優遇したと非難するが、その事実も証拠もない。京都産業大学については、近隣の大阪府立大学にも獣医学系があるうえ、これまで獣医学部新設提案の実績がない大学である。さらに、加計学園による本件獣医学部新設提案について事業認定をした国家戦略特区諮問会議の民間有識者議員であり、且つ特区ワーキンググループの八田達夫座長は、平成29年6月13日内閣府での記者会見で、「事業認定のプロセスには一点の曇りもなく、ルールに基づき適正に行なわれ、行政が歪められた事実はない。安倍首相からの要請は一切なく、加計ありきは事実に反する」と断言し、同年7月24日の衆議院予算委員会閉会中審査でも参考人として同趣旨の申述をしている。
そうすると、そもそも、安倍首相が加計学園の獣医学部新設計画をいつ知ったかにはかかわらず、安倍首相には本件事業認定のプロセスに不当な介入をして公正な競争をねじ曲げる余地が全くなかったのであって、もとよりその証拠もない。また、事業認定のプロセスにおいて同諮問会議の民間有識者議員らが加計幸太郎理事長や加計学園を特段優遇した事実も証拠もない。これがいわゆる学校法人加計学園「獣医学部新設問題」の本質であり、本件獣医学部は民間有識者議員らによる適正手続きを経て認可され、本年4月「岡山理科大学獣医学部」として開学したのである。野党は、事業認定のプロセスが不適正であったとの確たる事実も証拠も示さず、「腹心の友」だから優遇したに違いないといった憶測に基づく印象操作を国民に拡散し、この問題を「反安倍」の倒閣運動に利用しているに過ぎないと言えよう。
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