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2007-03-28 00:00
温家宝首相の訪日を迎えるに当たって
石原 雄介
大学生
来る4月12日から13日にかけて温家宝首相が訪日する。2000年の朱鎔基首相の訪日以来、実に7年ぶりの中国首相の訪日であり、「政冷経熱」と呼ばれた小泉政権期の日中関係がまさに停滞の時期であったことがあらためて実感させられよう。昨年10月の安倍首相の訪中、そして今回の温家宝首相の訪日と続く日中首脳の接近については、小泉政権期の「停滞」を打破するものとして歓迎する向きと、「靖国問題」を政治的に表面化させない安倍首相の「あいまい路線」への批判という賛否両論を招いているが、これらの評価は、より長い目で見るといずれも不完全な評価に留まっているといえる。
1998年11月の江沢民主席訪日の際に打ち出された日中共同宣言では、日中両国が平和と発展のための友好協力パートナーシップを結び、国際秩序形成に向けて建設的な協力関係を結んでいくことが合意された。この宣言は、日中間に多くの共通利益が存在すること、また日中の協力関係がもたらす影響は、アジア太平洋地域はむろんのこと、世界秩序の形成にまで及ぶことが確認された点で画期的なものであった。この宣言から、30項目を超える協力関係の強化という具体的な行動指針が誕生したのは周知の通りである。
共通利益とその国際秩序への影響の確認を盛り込んだ1998年の日中共同宣言に鑑みれば、昨年合意された「戦略的互恵関係」の構築は、日中関係のさらなる発展というよりは、小泉政権期に後退した日中協力の重要性の再確認にとどまっており、ようやくスタート地点に立ち戻ったとみるのが妥当ではないだろうか。事実、温家宝首相は、3月17日の全人代後の記者会見で、安倍首相の訪中を「凍りを砕く」もので、自身の訪日を「氷を溶かす」ものと例えており、これは昨年からの日中間の首脳外交がいまだダメージ・コントロールの域を脱しきれていないことを暗示しているといえる。
安倍訪中や今回の温家宝首相が訪日について、手放しの楽観や過剰な不審感は控えなければならないだろう。今後の日中関係を展望するためには、我が国の中長期的な対中政策の戦略枠組みをどう発展させていくのかに目を向ける必要がある。1998年以降の10年間に東アジア地域の国際環境はめまぐるしい展開を見せたが、とくに東アジア・サミットやASEAN+3といった将来の東アジア地域を担う中心的な協力枠組が誕生したことは注目に値する。それらのあり方が日中関係の動向に大いに依存している以上、我が国の対中戦略の方向付けは、もはやまったなしで構想されなければならない。日中関係がもつ国際秩序へのインパクト、特に1998年とは大きく異なる東アジア地域の中の日中協力として両国間関係を方針付ける外交戦略が今や安倍政権に求められているといえるだろう。
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