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2018-04-12 00:00
増税こそ財政健全化の障害
田村 秀男
ジャーナリスト
衆院で成立済みだった政府予算が4月から執行されているのは結構なことだが、メディアの多くは景気そっちのけで財政支出の拡大を批判する。そして、「国民1人当たりの借金は約837万円」(昨年11月11日付の日経新聞朝刊)というフェイク(虚偽情報)で人心を惑わす。財政支出は「悪」で、財政収支悪化の元凶であり、増税と緊縮財政が「財政健全化」につながる「善」だという論理である。政府債務を国民1人当たりの借金と置き換えるのは詐欺論法であることは、筆者が「官僚の詐術で増税路線」(2011年9月30日付産経朝刊1面コラム)で暴いて以来、多くの読者、専門家の間では今や常識になっている。財務省はさすがに気が引けたのかホームページではそっと一文を潜らせているが、上記の日経のように御用メディアが相も変わらず唱和、喧伝するのは何とも滑稽だ。
御用メディアや財務官僚が執拗に繰り返すように、日本の財政は悪化しているのか。中央政府、地方政府および公的年金などで構成される社会保障基金を合計した政府全体(財政用語で一般政府と呼ばれる)の資金収支額(赤字はマイナスで表示)の名目国内総生産(GDP)比とGDPを対比させ、推移を追ってみた。一般政府資金収支は国債関連を除外した財政の基礎的収支(プライマリーバランス)とほぼ一致し、そのGDP比は財政の健全度を表す。一目瞭然、アベノミクスがスタートした12年12月以来、ほぼ一本調子で改善している。
このトレンドが続くなら、20年までには均衡点に達するはずだ。唯一、改善基調が腰折れしたのは、消費税率を5%から8%に引き上げた14年度であることは明らかだ。増税こそが財政の健全化の障害になるのだ。にもかかわらず、御用メディアは財政収支の改善ぶりからは目を背け、財政支出削減と消費税増税の必要性を連呼する。そして、「財政収支の悪化」が今後も続くという悲観論一色だ。言わば、「増税=財政健全化」のバカの壁に刷り込まれた自虐論である。メディアの根拠なき緊縮主義は家計の財布のヒモを締めさせ、企業には賃上げや設備投資の意欲を萎えさせる。罪深いフェイクだ。
アベノミクス開始後、財政収支赤字のGDP比が縮小に転じた最大の理由は財政支出拡大なのだが、御用経済学者もその動かぬ真実とは真逆の見解を盛んに日経新聞の経済教室欄で展開している。同教室は最近では、デフレ圧力に悩む日本では金融緩和だけではなく、財政支出拡大が有効とする米国のノーベル経済学受賞のクリストファー・シムズ教授の見解をけなす連載を行った。それほど、シムズ学説に反論があるなら、その無効性を証明するのがスジというものだが、実証性ゼロだ。シムズ理論が安倍政権の財政拡張派を勢いづけてしまうという日経などの警戒からきているようだが、それは財務官僚の受けを意識しただけの空理空論ではないか。
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