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2018-03-31 00:00
植民地統治時代の受け止め方の違い
田村 秀男
ジャーナリスト
最近、20年ぶりに台湾を訪れた。李登輝元台湾総統に代表される日本語を話せる世代は高齢化のために数少なくなったが、現地の人々の親日ムードは以前にも劣らない。台北近郊、国際空港のある桃園市では、日本による統治時代の神社がきれいに修復、保存され、ゴミ一つもない。特有の清らかで静謐(せいひつ)な雰囲気の中、若いカップルが結婚衣装で記念撮影していた。台湾では何の違和感もなく、「日本」が受け入れられている。
韓国では、平昌での冬季五輪でフィギュアスケートの羽生結弦さんら多くの日本人選手が韓国のファンをひき付けたのだが、政治のほうは相変わらずの反日、親北だ。文在寅政権は日韓慰安婦合意を踏みにじり、日米の懸念をよそに北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長にすり寄る。朝鮮半島も台湾も戦前は日本の植民地だった。現在の日本に対する見方にこうも違いが生じるのだろうか。そこで、日本の統治時代の経済はどんな具合だったのか、英国植民地のインドと比べるとどうかと、当時の実質経済成長率の比較してみた。データは綿密な検証によって世界経済の歴史的数値を割り出している英グロニンゲン大学成長・発展センターから引用した。
戦前の韓国(現在の北朝鮮を含む)と台湾の実質成長率はおおむね、インドのそれを大きく上回っている。特に、1930年代の大恐慌時代になると、韓国、台湾とも5%前後の成長率で、インドの1%前後を大きく引き離している。韓国、台湾の成長率は20年代後半から30年代末まで、日本本国の成長率を上回る年が大半だった。教育の普及はもちろん、水力発電所、道路、都市整備などインフラ投資、農業や鉱工業の開発まで日本が投じた資金や労力の成果がこの成長率に結実したのだ。北の金正恩政権が国民の困窮をよそに、核・ミサイル開発に血道を上げ、国連制裁にもめげない背景には、日本統治時代に建設した堅固な水力発電所などのインフラがいまだに有用であることも挙げられる。
日本の韓国、台湾統治とは対照的に、英国のインド統治は文字通り苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)を極めた。当時の英国は軍事費と国家公務員年金の大半をインドに支払わせていた。インドから綿花、香料、紅茶など豊富な物資を好きなだけ買った。代金は「インド証券」という名のポンド建て債務証書で決済し、英国はインドの通貨ルピーをポンドに対して切り上げて、債務を踏み倒した。英国貴族の豪壮な館や大英博物館などの偉容はインドの犠牲のうえに築かれた。経済学者の故宇沢弘文さんはインドを略奪しては荒廃させる大英帝国を「海賊的資本主義」と呼んだ。日本による植民地統治は、日本側の持ち出しだと言っておかしくない。台湾の多くの人々がそれをごく温かく受け止める。逆に、韓国人の多くが日本を憎み、あら探しばかりするのはなぜか、聞いてみたい。
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