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2007-03-23 00:00
東アジア共同体と「自由と繁栄の弧」
石垣泰司
東海大学
麻生外相の「自由と繁栄の弧」外交イニシャティブは、昨年11月末発表以来我が国内外において様々な論議を呼んでいるが、3月12日の日本国際フォーラム創立20周年記念祝賀会での麻生外相のご説明によれば、諸外国からはとくに高い評価を一様に受けているとのことであった。実際にも麻生外交の柱の1つとして具体的に各地域で推進されはじめたようで、外務省ホームページによれば「自由と繁栄の弧」は「日本外交の新機軸」と銘打たれ、対中央アジア外交のほか最近我が国のイニシャテイブで東京で開催されたイスラエル・パレスチナ間の4者対話仲介外交も「自由と繁栄の弧」の一環として位置づけられている。他方、その地理的対象外となるアフリカ、中南米地域諸国からは疎外感の声や安倍総理の施政方針スピ-チで言及されないものが日本外交の柱といえるのかといった指摘もあるようである。
筆者は、「自由と繁栄の弧」というアプロ-チは、日本外交の新たな発想である「価値の外交」を正面から打ち出したものとして注目に値するものであり、中央アジアやその周辺地域に対する日本外交の狙いに理論的基盤を与える上では有効なものと思われるが、東アジア共同体をめぐるわが国外交活動にもそのまま同コンセプトを当てはめることは極めて慎重を要すると考える。
というのは、東アジア共同体構築をめぐるASEAN+3における論議はすでにこれまでの関係諸国間の地道な対話プロセスを経て一定の深まりを見せており、我が国が強く主張してきた普遍的価値の重要性についても、すでにシンガポール等をはじめとするASEAN諸国の理解を獲得しつつある最中の状況にあるからである。とはいえ「アジア的価値」の重要性を強調するマレ-シアや自国の一党支配体制や人権上の問題についての指摘を受けている中国の反発、警戒心も根強いと云わなければならない。ASEAN諸国が地理的に「自由と繁栄の弧」に入ることは明らかであるが、中国は外されている。麻生外相自身、昨年11月30日筆者も拝聴した最初のスピーチの中で「中国との関係ではよろいが見えると思われるかもしれないが、とくに中国に向けられたものではない」との趣旨をわざわざ言及されたことを記憶しており、中国との関係を意識されているようだ。
中国側においても、これにすでに警戒心を示しているようで、例えば3月12日霞ヶ関で柿沢弘治氏も参加して開催された東海大平和戦略研主催の東アジア共同体に関するシンポジウムでも中国社会科学院のパネリストが麻生外相の「自由と繁栄の弧」に言及し、1つの中国包囲網と理解してるとしてこれに反発する発言を行っていた。阿南前駐中国大使も強い疑問を呈していると報道されている。ASEAN諸国は、日中間における緊張関係には極めて敏感であるので、東アジア共同体構築におけるわが国の当然極まりない普遍的価値の主張に別途の考慮からの警戒心が持ち込まれ、ASEAN諸国がより慎重となるような状況を自ら作り出すリスクは避けるのが賢明であろう。
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