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2018-03-03 00:00
中国主席任期制限撤廃は不吉な予兆
倉西 雅子
政治学者
反腐敗運動を粛清の口実に利用しつつ、昨年10月に開催された共産党全国人民代表会議において独裁的地位を固めた習近平国家主席。その野望は遂に習体制の永続化に及び、国家主席の任期を連続2期までとする憲法上の制約を撤廃する方針なそうです。同憲法改正案が成立すれば、3期どころか“終身国家主席”の可能性も視野に入ってくるのですが、この改革、どこか不吉な予感を漂わせています。何故ならば、歴史を振り返りますと、独裁体制の成立とは、第二次世界大戦に先立つドイツのヒトラー政権の誕生は言うまでもなく、戦争との結びつきが強いからです。ロシア革命以降、ソ連邦が狂暴化した背景には、一党独裁を個人独裁に転換したスターリンによる独裁体制の成立がありましたし、ソ連邦の復活を夢想し、軍事行動を厭わないプーチン大統領も、ロシア共和国憲法における任期規制の迂回ルートをあざとく見付け、大統領の座に返り咲いています。
こうした事例は枚挙に遑がないのですが、独裁体制と戦争との関連性は、その組織形態から説明することができます。何故ならば、開戦の決定権は言うに及ばす、軍隊ほど、集権的な指揮命令系統を必要とされる組織はないからです。目まぐるしく戦況が変化する戦場にあっては、リーダーその即決・即断、並びに、その命令を受けた軍隊の組織的、かつ、迅速な行動が勝利の行方を決してきました。平時においては、国民各層の利害を慮りながら合意を形成する調整型のリーダー等も必要とされますが、有事には、統率型のリーダーが適しているのです。しかも、有事にあっては、平時ほどにはリーダーの暴走をストップさせるブレーキ機能を要しません。戦場とは、兵士や兵器の対決によって勝敗が即決される場ですので、ブレーキをかける暇もなければ、その必要性も低いのです。
独裁のメリットとしても指摘されている上意下達の迅速性と効率性は、何れの国でも軍隊組織においてこそ発揮され、有事には有効に機能しますが、平時にこの体制を維持しますと、国民、並びに、周辺諸国が巻き添えとなります。同体制を維持したい独裁者は、国民に忠誠を求め、かつ、国民を厳格な統制化に置くために戦争を渇望すると共に、戦争が相手国を要する以上、周辺諸国は同国から侵略を受けるリスクが格段に高まるからです。
この側面に注目すれば、今般、中国が、人民解放軍の掌握を伴う長期独裁体制の方向に向かって歩を進めているとしますと、これは、国家の全面的な軍隊組織化、即ち、軍事独裁体制が成立する予兆なのかもしれません。国連の常任理事国であり、核保有国でもある中国において軍事独裁体制が敷かれるとしますと、その脅威は北朝鮮の比ではありません。同憲法改正案が成立する日、それは、国際社会が一段と対中警戒レベルを上げざるを得なくなる暗黒の日となるのではないでしょうか。
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