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2018-03-03 00:00
米景気変調に備えよ
田村 秀男
ジャーナリスト
米国株価急落をきっかけに日本を含め世界株安連鎖が起きた。日米とも企業収益は好調で2008年9月のリーマン・ショック再来はありえないが、ただ一つ気になることがある。上昇株価が支えてきた米景気が変調をきたすリスクだ。外需頼みの日本は金融・財政の両輪を稼働させて、内需主導へと経済政策のかじを切るべきだ。米国景気は株価次第だ。株価が上がれば個人消費も企業の設備投資も必ず上がる。そう見抜いたバーナンキ元米連邦準備制度理事会(FRB)議長はリーマン後、3度に分けて3兆5千億ドルの資金を金融市場に投入し、超低金利政策と合わせて株価を押し上げて景気拡大に成功した。
昨年発足したトランプ米政権はさらに大型インフラ投資や史上最大規模の減税に乗り出し、株価の上昇に弾みをつけた。リーマン後に比べ、17年末までに時価総額が20兆ドル増えた米株式市場は、5兆ドル余りの国内総生産(GDP)増をもたらした。その半面、市場では昨年半ば頃から株式の過熱懸念が高まっていた。株式時価総額は昨年末でGDPの1.6倍以上に達し、リーマン前の1.4倍をはるかに超えた。株価は企業収益からみた適正水準を7割以上も上回っている、などの見方だ。そんな中、賃上げとともにインフレ期待が生じ、市場金利が上昇し、投資家は一斉に株売りに転じた。
金融市場に巨額のゼロ金利の資金があふれた局面が完全に終わり、FRBによる金利引き上げと資金の回収が始まり、株式市場は大調整期に突入したのだ。このまま市場に不透明感が残り、株価が低迷するようだと、個人消費や設備投資も道連れにされかねない。米ハーバード大学のM・フェルドシュタイン教授は、企業収益に対する株価の水準が過去の平均値まで下がれば、「個人消費は4千億ドル、GDPの2%以上が減る」(1月17日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙)と警告している。
日本のほうは幸い、政策の追加余地はかなりある。日銀のマイナス金利政策のおかげで政府は額面価格を上回る収入が見込める国債を発行できる。その超過収入は平成28年度2.7兆円、29年度と30年度はそれぞれ1.5兆円の見込みという具合だ。安倍晋三政権は異次元金融緩和政策と機動的で大胆な財政出動を組み合わせて、脱デフレと内需拡大を急ぐべきだ。
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