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2007-03-14 00:00
六カ国協議の日本外交の位置づけ
舛島 貞
大学助教授
日本の六ヶ国協議における外交については、拉致問題を重視し一貫性を保持した点を評価する向きと、北朝鮮への支援に加わらなかったことで発言権を喪失したのではないかという懸念を表明する向きがあったように思える。そうした中で、異色の議論をしたのが『東京新聞』の吉田昌平記者だ。「日本、支援カード温存 負担拒否し孤立化の恐れも」という記事は、「拉致問題の進展を北朝鮮への見返り支援の条件にする日本には、最後まで出番はなかった」としつつも、同時に「しかし、そろばんをはじけば、『拉致重視』の姿勢を各国から容認され、今後をにらんだ経済支援カードを温存。日朝協議への糸口をつかんだ“腹の痛まない”合意内容となった」とする。日本首席代表の佐々木賢一郎アジア太平洋局長も、今回の案を「なかなかいい案」と評した。そして、エネルギー支援に日本が加わらないことを決断したのは、ほかならぬ総理自身であったという。「金を出さない」(それでも物は言う)日本外交の姿は、新しいものとして位置づけることができるかもしれない。
この六ヶ国協議をふまえた日朝間の二国間交渉がハノイでおこなわれた。拉致と支援の狭間で二国間交渉がどのように推移するのかに注目が集まった。だが、その結果は到底妥協には至らぬものであった。日本が留保したはずのカードは切れなかったし、切るときでなかった、というのが日本政府の立場だろう。そうなると、「カードの切り時」というのは何時なのか。相手が拉致問題について日本の交渉を全て呑んだときか?しかし、外交交渉で100対0ということはあまりない。ゼロサム的な思考でカードを切るタイミングを果たしてはかることができるであろうか。日本政府としては、筋を通しながら、長期戦で望むということになるのであろう。だが、次の会議は何時なのか、まだ決まっていない。
これまで、アメリカ追随とか、「金を出しても口は出さない」とか言われた日本外交にとって、今回の六ヶ国協議におけるスタンスは肯定的に捉えられる可能性を充分にもったものだろう。しかし、それが歴史的に肯定的に評価されるようになっていくためには、不断に肯定されるような方向にアジェンダをセットしていかねばならないのではないか。そうした意味での長期戦が必要だと考える。
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