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2018-01-30 00:00
今年こそは脱デフレ元年になるのか
田村 秀男
ジャーナリスト
今年こそは脱デフレ元年になるのか。日銀が発表した「生活意識に関するアンケート調査」(昨年12月実施)結果が興味深い。暮らし向きを国民がどう受けとめているかを知ることはいわば政治の要諦だ。1984年、筆者がワシントンに駐在していたとき、政権1期目のレーガン大統領は再選を目指した選挙戦で、「あなた方の生活は良くなったか」と聴衆に問いかけると「イエス」との声が湧き上がり、ライバルに圧勝したことを思い出す。日銀調査のうち、1年前に比べた「暮らし向き」と「物価に関する意識」を抜き出して推移を追った。暮らし向きが良くなったとする回答の割合から悪くなったとする割合と、物価が「上がった」とする割合から「下がった」とする割合を差し引いてみれば、1997年から始まった慢性デフレのもと、暮らし向きが悪いと感じる消費者が多いのはよく理解できる。賃金など収入が減るからだ。
他方で、経済統計上の物価が下がり続ける状態がデフレなのだが、物価が上がっているという意識を持つ消費者がほぼ一貫して多数を占める。統計と実感のズレのようではあるが、家人から「あなたはデフレというが、物価は上がっているよ」と文句を言われ続けてきた。身近な生鮮食料品の一時的な値上がりの印象が脳裏に残るし、食用油や加工食品なども同じ値段で中身が減っているから物価が高くなっている感覚が強いのだ。2012年12月のアベノミクス開始後、暮らし向きが悪くなったとする割合は目覚ましく減ったものの、14年4月からの消費税増税が改善基調をぶち壊した。消費税率上乗せ分だけ物価が上昇するので消費者の懐が寂しくなった。
当時、消費税引き上げに奔走するあるエリート官僚は「消費税率引き上げに伴って物価が上がれば、デフレが終わります」と筆者にうそぶいたことを思い出す。確かに、エリート官僚が米国で学んだ経済学では物価下落基調のときはデフレ、上昇が続くときはインフレなのだが、日本のような慢性デフレを説明できない。脱デフレとは物価が上がり続けることではない。物価上昇以上に賃金が上昇することなのだ。物価が2%上がっても、賃上げ率がそれ以下だと、消費者の生活実感は好転せず、消費を抑えるので、需要が減る。その結果再びデフレに戻る。
気になるのは、安倍晋三政権の緊縮財政路線だ。今年度は補正後の歳出が前年度比、1・1兆円減。補正後の税収見込みは57・7兆円で、16年度税収に比べて2・3兆円の増。つまり、政府は合計で3・4兆円、国内総生産(GDP)比0・7%分もの実需を民間から奪う。おまけに、サラリーマンへの所得増税に加えて、20年度は消費税率の10%への引き上げを首相が公約している。首相は経団連に賃上げを求めるが、政府がその前に財政面で民間需要を減らす。全雇用の9割を支える中小企業に賃上げが浸透するのだろうか。
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