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2018-01-26 00:00
北朝鮮のオリンピック参加カードは“ババ”では?
倉西 雅子
政治学者
先日、朝鮮半島の板門店で再開された南北対話における主要議題は、来月に開催が予定されている北朝鮮の平昌オリンピック参加問題であったとされています。膠着状態にある北朝鮮の非核化問題に対する解決の糸口となるとの期待もありますが、その後の流れを見ておりますと、その光景は喜劇的ですらあります。南北両国とも、北朝鮮のオリンピック参加こそ、さも重大な国際問題化のように扱っています。とりわけ、韓国の文在寅大統領の熱意は並々ならず、この結果、北朝鮮側に足元を見られ、外交カードを握られる結果を招いています。その一方で、リップサービスとしては北朝鮮の平昌オリンピック参加に歓迎の意を表しながら、その実、同国の参加を心底から祝福している国は殆どありません。むしろ、同国の参加が平昌オリンピックに政治的意味合いを持たせるとしますと、オリンピックの政治利用ともなりますし、ルールに基づいて正々堂々と競技するスポーツマンシップを強く求めるオリンピックの精神に鑑みましても、無法国家である北朝鮮チームの参加は、同大会に暗い影を落としているのです。
北朝鮮が同オリンピックへの不参加を表明しても、韓国以外の諸国は、“どうぞ、お好きなように”と応じるのみでしょう。仮に、北朝鮮の参加に何らかのメリットがあるとしますと、それは、少なくとも、同国の選手団が韓国領域内に派遣されている期間は、北朝鮮側からの同国に対する奇襲的な軍事行動はあり得ない、ということぐらいかもしれません(もっとも、ロシアは、北京オリンピックの開催日にジョージアへの侵攻を決行した…)。かくして、誰も歓迎しない北朝鮮の平昌オリンピック参加なのですが、南北両国だけは、別世界の住民であるかのように、平昌オリンピック参加カードをめぐり“真剣勝負”を繰り広げています。しかしながら、このカードは、「ババ抜き」ゲームの“ババ”なのかもしれません。
誰もがババを引かないように身構える中、韓国だけが、嬉々としてこのカードを引こうとしているのです。仮に、このカードを韓国が引いてしまいますと、平昌オリンピックは、“平和の祭典”としての意義が脇に押しやられ、“民族の祭典”と化すかもしれません。北朝鮮側は、既に“美女軍団”と称される選りすぐりの若い女性達で構成される芸術団の派遣を凡そ固めているようですが(1月16日の報道では、北朝鮮側からの芸術団の派遣が合意されたらしい…)、競技種目ではメダルの獲得は難しくても、開催国である韓国との協力の下、“アリラン祭”を髣髴させるような全体主義的パフォーマンスを演出することでしょう。
南北両国は、オリンピックを絶好の国威発揚の場とするかもしれないのです(オリンピック史において、選手や役員団ならぬ“国家選抜女性応援団”を派遣した国は前代未聞では?)。そして、南北融和の過剰演出は、その後、米中両国の狭間にあって、韓国の国際的な立場をさらに苦しいものとすることでしょう。南北両国による奇妙な「ババ抜き」ゲームは、両国のみの自己満足に過ぎず(韓国は、ババを引きたことに気が付いていない…)、肝心の北朝鮮の核・ミサイル問題の解決にとりましては、攪乱要因にしかならないのではないかと思うのです(もしくは、両国の共同作戦?)。
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