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2018-01-20 00:00
対中政策における政経分離は無理では?
倉西 雅子
政治学者
昨年末頃から、与党幹事長等による訪中の成果なのか、日本国政府の対中姿勢に緩和傾向が見られるようになりました。安倍首相も、一帯一路構想への協力に言及するなど日中関係改善に意欲を見せ始めたのですが、今年に入り、俄かにこの改善ムードに冷や水を浴びせる事件が発生しました。報道に拠れば、今月11日に尖閣諸島沖の接続水域を航行していた潜水艦は、公海での浮上により中国籍であることが判明したそうです。原子力潜水艦ではないかとする憶測もあり、中国が、依然として軍事力を以って日本国から尖閣諸島を奪う計画を保持し続けていることが窺えます。太平洋への進出は“中国の夢”の実現には不可欠であり、地政学的にそれを阻む位置にある日本国は、中国の軍事戦略上、何としても攻略すべき存在なのでしょう。
中国が、政教一致のイデオロギーの下で百年単位の長期的な視野から対日政策を練り、目的に向かって着々とスケジュールを遂行してきたのに対して、日本国側の対中政策の基本原則は、政経分離であったように思えます。喩え軍事や政治において対立していたとしても、両国の敵対関係は経済分野へは波及しないとする楽観論です。しかしながら、この楽観論は今日に至るまで裏切られ続けており、日本国は何度となく煮え湯を飲まされてきたのが現実です。尖閣諸島国有化に際しても、中国国内では激しい日本製品排斥運動が発生しましたし、何よりも、今般の一件は、経済面における関係改善が尖閣諸島に関する中国の対日方針に全く影響を与えないことを如実に示しています。
しかも、この事件が、昨年10月に開催された中国共産党第十九回全国代表大会の後に発生したことは、極めて重要な意味を持ちます。何故ならば、この大会においてこそ、習近平国家主席が、人民解放軍全軍に対する指揮権を含め、独裁的な権力基盤を固めたとされるからです。大会以前にあっては、人民解放軍の突発的な行動や挑発行為は、同軍の一部部隊や末端による“誤り”として弁解され得る余地がありましたが、習体制が確立した今日にあっては、この説明は最早通用しません(ただし、仮に、今般の一件が一部の人民解放軍による独自行動であれば、それは、習体制が早くも綻びを見せている証拠となりましょう)。
中国の国家体制が政治目的を優先する政経一致体制である点を踏まえますと、日本国は、早晩、対中政策における政経分離論の見直しを迫られるかもしれません。軍事力こそ、中国にとりましては経済面における脅迫手段ともなり得るのであり、この点を見誤りますと、“敵に塩を送る”ことになりかねないと思うのです。
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